非上場株式の譲渡時の時価③-税法ごとの時価における原則的な考え方とその違いを整理せずに実務を行っていないか?
Q 非上場株式の時価について、各税法上の時価の原則的な考え方とその違いを教えてくれますか?
A 法人税法と所得税法では取引の「所得」に着目して時価を考えるのに対し、相続税法では相続発生時点での「清算」に着目して時価を考えます。
解説
法人税法と所得税法においては、株式譲渡に対する課税は、取引から生じる「所得」に着目して課税されるのに対し、相続税法においては、被相続人の財産を相続人等が相続することによる財産の「清算(取得)」に着目して課税されます。
この課税に対する税法上の時価の考え方の違いが、非上場株式の時価評価において最も顕著な違いとなって現れているのが、純資産価額の計算における、含み益に対する法人税等相当額の控除の可否です。
相続税法上の時価を計算する際には、相続発生時点での「清算」を考え、清算時に想定される法人税等の控除を行いますが、法人税法上の時価、所得税法上の時価を計算する際には、取引の「所得」を考え、清算する考えはありませんので、清算時の法人税等の控除は行いません。
各税法の課税標準の計算
法人税法、所得税法の課税標準の計算
法人税法では「益金−損金=所得」、所得税法では「収入金額−必要経費=所得」により、課税標準である所得を計算します。
相続税法の課税標準の計算
相続税法では、被相続人が相続発生日時点で保有する資産負債を時価評価して、「資産−負債=純資産」により、課税標準である純資産を計算します。