非上場株式の譲渡時の時価⑨-同族関係者(個人)の範囲を整理せずに実務を行っていないか?
Q 非上場株式の譲渡時の時価を算定するために重要となる、同族関係者(個人)の範囲について教えてくれますか?
A 法人税法施行令第4条の同族関係者の範囲に従います。
解説
非上場株式の評価方式について、原則的評価方式となるか、特例的評価方式となるかは会社に対する支配力の有無で決定します。同族株主に該当するか否かの判定(財産評価基本通達188)において、同族関係者の範囲は法人税法施行令第4条の規定に従います。
同族関係者(個人)は以下の範囲です。
法人税法施行令における親族の範囲は、民法第725条に定める「6親等内の血族、配偶者及び3親等内の姻族」と解されており、同族関係者の範囲は非常に広いです。この点が争点になった判例がありますが、形式的な判定基準を定めるためには、一定の割切は必要であることが伺えます(平成8年12月13日東京地裁判決)
平成8年12月13日判決 東京地裁
民法上の親族の範囲
「・・・たしかに、会社経営への影響力の有無の判定基準として、民法上の親族であることがどれだけ実質的意味を有するのか、6親等内の血族をすべて同列に扱うべきかについては、議論の余地があるところである。しかし、評価通達188が規定するところは、一般的には、民法上の親族に対しては影響力を及ぼし得ることを前提として、親族を含む同族関係者の持株数を合算した株式割合をもつて会社経営に実質的支配力を有する同族グループを認定し、あわせて、かかる同族株主以外の者が取得した株式については、特例的評価方式である配当還元方式を採用しようとするものであつて、このこと自体を不当というべきものとは解されない。」
中心的な同族株主、5%基準の設定
「すなわち、評価通達は、同族株主でも親等の遠い者については血縁の力が弱まることを当然の前提として、近親者の持株数の合算により中心的な同族株主を定め、他方、持株割合が会社経営への影響力の一つの徴表であることから、中心的な同族株主以外の同族株主のうち、持株割合が5パーセント以上となる者が取得する株式については、特例を適用しないこととしたものである。そして、[証拠略]によれば、特例的評価方式の適用について、株式取得後の持株割合が5パーセント未満という基準を設定した根拠には、会社経営者からみて親族関係が薄いと考えられる4親等以下の血族の持株割合が1人当たり5パーセント程度であるという実態調査の結果があることが認められ、右基準の合理性を一応肯定できるというべきである。また、個別的には5パーセントという区分基準が合理性を欠く場合があるとしても、一般的基準を定立した場合にその基準の内外で差が生じ、僅差で基準の内外に分かれた事例において不平等感が残ることはやむを得ないものというべきであつて、その故に区分の基準となる持株割合を7パーセントあるいは10パーセントとすれば合理的であるとする根拠はないのである。」
過半となる同族グループの株主のみが同族株主
「たしかに、複数の同族グループの一つが株式の過半数を有し、経営支配力の差が明らかである場合には、持株割合が過半となる同族グループの株主のみが同族株主となり、他の同族グループの取得株式は持株割合にかかわらず配当還元方式によつて評価されることは原告の指摘するところであり[評価通達188(1)]、類似の事態は、同一の同族グループ内において複数のグループが存在するときにも想定できるところであるから、持株割合5パーセントをもつて同族グループ内における配当還元方式の採用を画する基準とするときは、右指摘の場合との均衡を欠く結果となることもあり得るところである。しかし、同一の同族グループ内における支配グループとその余のグループの形成は、2親等の血族といつた近親者間にも生じ得るものであり、ときには近親者間の個人的関係に起因することもあり得る会社経営への影響力の優劣を株式評価に反映させることはかえつて評価をあいまいなものとすることになるのである。」
財産評価基本通達188(同族株主以外の株主等が取得した株式)
178≪取引相場のない株式の評価上の区分≫の「同族株主以外の株主等が取得した株式」は、次のいずれかに該当する株式をいい、その株式の価額は、次項の定めによる。(昭47直資3-16・昭53直評5外・昭58直評5外・平15課評2-15外・平18課評2-27外改正)
(1) 同族株主のいる会社の株式のうち、同族株主以外の株主の取得した株式
この場合における「同族株主」とは、課税時期における評価会社の株主のうち、株主の1人及びその同族関係者(法人税法施行令第4条((同族関係者の範囲))に規定する特殊の関係のある個人又は法人をいう。以下同じ。)の有する議決権の合計数がその会社の議決権総数の30%以上(その評価会社の株主のうち、株主の1人及びその同族関係者の有する議決権の合計数が最も多いグループの有する議決権の合計数が、その会社の議決権総数の50%超である会社にあっては、50%超)である場合におけるその株主及びその同族関係者をいう。
(2) 中心的な同族株主のいる会社の株主のうち、中心的な同族株主以外の同族株主で、その者の株式取得後の議決権の数がその会社の議決権総数の5%未満であるもの(課税時期において評価会社の役員(社長、理事長並びに法人税法施行令第71条第1項第1号、第2号及び第4号に掲げる者をいう。以下この項において同じ。)である者及び課税時期の翌日から法定申告期限までの間に役員となる者を除く。)の取得した株式
この場合における「中心的な同族株主」とは、課税時期において同族株主の1人並びにその株主の配偶者、直系血族、兄弟姉妹及び1親等の姻族(これらの者の同族関係者である会社のうち、これらの者が有する議決権の合計数がその会社の議決権総数の25%以上である会社を含む。)の有する議決権の合計数がその会社の議決権総数の25%以上である場合におけるその株主をいう。
(3) 同族株主のいない会社の株主のうち、課税時期において株主の1人及びその同族関係者の有する議決権の合計数が、その会社の議決権総数の15%未満である場合におけるその株主の取得した株式
(4) 中心的な株主がおり、かつ、同族株主のいない会社の株主のうち、課税時期において株主の1人及びその同族関係者の有する議決権の合計数がその会社の議決権総数の15%以上である場合におけるその株主で、その者の株式取得後の議決権の数がその会社の議決権総数の5%未満であるもの((2)の役員である者及び役員となる者を除く。)の取得した株式
この場合における「中心的な株主」とは、課税時期において株主の1人及びその同族関係者の有する議決権の合計数がその会社の議決権総数の15%以上である株主グループのうち、いずれかのグループに単独でその会社の議決権総数の10%以上の議決権を有している株主がいる場合におけるその株主をいう。
第四条 法第二条第十号(同族会社の意義)に規定する政令で定める特殊の関係のある個人は、次に掲げる者とする。
第七百二十五条 次に掲げる者は、親族とする。