非上場株式の譲渡時の時価⑥-消費税法では、原則として時価ではなく対価に基づく点を見逃していないか?
Q 非上場株式の譲渡時の時価について、消費税法における算定方法を教えてくれますか?
A 消費税法では、原則として時価は関係なく、非上場株式の譲渡対価の額に基づいて消費税を計算します。
解説
消費税法では、国内において事業者が事業として対価を得て行った課税資産の譲渡等に、消費税が課されます(消費税法第4条第1項、消費税法第2条第1項第8号)。
消費税の計算は、課税資産の譲渡等の対価の額に基づきますが、この対価の額は「その課税資産の譲渡等を行った場合の当該課税資産等の価額をいうのではなく、その譲渡等に係る当事者間で授受することとした対価の額をいう」と規定されています(消費税法第28条第1項、消費税法基本通達10-1-1)。
したがって、原則として時価ではなく、対価の額に基づき消費税を計算することになります。
例外として、「個人事業者の自家消費」と「法人がその役員に対して行う資産の贈与及び著しく低い価額による譲渡」の場合には、その時価を対価の額とみなして課税されます(消費税法第4条第5項、消費税法第28条第1項、第3項、消費税法基本通達10-1-1、10−1−2、10−1−18、5−3−5)。
例外の場合のみ時価の算定が必要となりますが、仮に非上場株式を法人が役員に対して贈与又は低額譲渡をするケースでは、法人税法上の時価を対価の額とみなして、課税売上割合の分母にその5%を含めることになります。
消費税法第4条第5項(課税の対象)
消費税法第2条第1項第8号(定義)
八 資産の譲渡等 事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供(代物弁済による資産の譲渡その他対価を得て行われる資産の譲渡若しくは貸付け又は役務の提供に類する行為として政令で定めるものを含む。)をいう。
消費税法第28条第1項(課税標準)
消費税法第28条第3項(課税標準)
消費税法基本通達10-1-1(譲渡等の対価の額)
法第28条第1項本文《課税標準》に規定する「課税資産の譲渡等の対価の額」とは、課税資産の譲渡等に係る対価につき、対価として収受し、又は収受すべき一切の金銭又は金銭以外の物若しくは権利その他の経済的利益の額をいい、消費税額等を含まないのであるが、この場合の「収受すべき」とは、別に定めるものを除き、その課税資産の譲渡等を行った場合の当該課税資産等の価額をいうのではなく、その譲渡等に係る当事者間で授受することとした対価の額をいうのであるから留意する。(平9課消2-5、平27課消1-17により改正)
(注) 同条第1項ただし書又は第3項《資産のみなし譲渡》の規定により、法人が役員に対して著しく低い価額で資産の譲渡若しくは贈与を行った場合又は個人事業者が棚卸資産又は棚卸資産以外の資産で事業の用に供していたものを家事のために消費若しくは使用した場合には、当該譲渡等の時におけるその資産の価額により譲渡があったものとされる。
消費税法基本通達10-1-2(著しく低い価額)
法第28条第1項ただし書《課税標準》に規定する「資産の価額に比し著しく低いとき」とは、法人のその役員に対する資産の譲渡金額が、当該譲渡の時における資産の価額に相当する金額のおおむね50%に相当する金額に満たない場合をいうものとする。
なお、当該譲渡に係る資産が棚卸資産である場合において、その資産の譲渡金額が、次の要件のいずれをも満たすときは、「資産の価額に比し著しく低いとき」に該当しないものとして取り扱う。
(1) 当該資産の課税仕入れの金額以上であること。
(2) 通常他に販売する価額のおおむね50%に相当する金額以上であること。
ただし、法人が資産を役員に対し著しく低い価額により譲渡した場合においても、当該資産の譲渡が、役員及び使用人の全部につき一律に又は勤続年数等に応ずる合理的な基準により普遍的に定められた値引率に基づいて行われた場合は、この限りでない。
消費税法基本通達10-1-18(自家消費等における対価)
個人事業者が法第4条第5項第1号《個人事業者の家事消費等》に規定する家事消費を行った場合又は法人が同項第2号《役員に対するみなし譲渡》に規定する贈与を行った場合(棚卸資産について家事消費又は贈与を行った場合に限る。)において、次の(1)及び(2)に掲げる金額以上の金額を法第28条第3項《みなし譲渡に係る対価の額》に規定する対価の額として法第45条《課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れについての確定申告》に規定する確定申告書を提出したときは、これを認める。(平27課消1-17により改正)
(1) 当該棚卸資産の課税仕入れの金額
(2) 通常他に販売する価額のおおむね50%に相当する金額
消費税法基本通達5-3-5(役員に対する無償譲渡等)
法第4条第5項第2号《役員に対するみなし譲渡》又は第28条第1項ただし書《課税標準》の規定により、法人がその役員に対し、資産を無償で譲渡した場合又は資産の譲渡の時における当該資産の価額に比し著しく低い対価の額で譲渡した場合には、当該譲渡の時における価額に相当する金額がその対価の額とされるのであるが、法人がその役員に対し無償で行った資産の貸付け又は役務の提供については、これらの規定が適用されないことに留意する。(平27課消1-17により改正)
(注) 所基通36-21《課税しない経済的利益……永年勤続者の記念品等》又は36-22《課税しない経済的利益……創業記念品等》において給与として課税しなくて差し支えないものとされている記念品等については、役員に対して無償支給する場合であっても、法第4条第5項第2号に該当しないものとして取り扱って差し支えない。
国税庁HP No.6321 法人の役員に対する贈与・低額譲渡の取扱い
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6321.htm
国税庁HP No.6317 個人事業者の自家消費の取扱い
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6317.htm