非上場株式の譲渡時の時価⑫-個人から個人への譲渡時の時価と課税が生じる場合を整理せずに実務を行っていないか?

Q 個人から個人への非上場株式の譲渡時の時価と、課税が生じる場合について教えてくれますか?

A 相続税法上の時価が適用時価となり、株式譲受人が会社に対する支配権を有するにも関わらず、時価よりも著しく低い価額で株式を取得した場合には、譲受人に贈与税が課税されます。

解説
非上場株式の評価方式について、原則的評価方式となるか、特例的評価方式となるかは会社に対する支配力の有無で決定します。つまり、原則的評価方式と特例的評価方式の株価の差額は、会社に対する支配権の価値により生じています。

個人から個人への株式譲渡では、譲渡人、譲受人に適用される税務上の時価は、いずれも「相続税法上の時価」が基準となります。相続税法上の時価が適用される場合には、同族株主に該当するか否かの議決権割合による判定時期は「株式譲渡後」です。

したがって、株式譲渡後に、譲受人側に会社に対する支配力があるかどうか(会社に対する支配権の価値を享受するかどうか)により、時価が原則的評価方式による価額となるか、特例的評価方式による価額となるかが決定します。

 

「適用時価、株主区分の判定時期、評価方式」

譲渡人における適用時価:相続税法上の時価
譲受人における適用時価:相続税法上の時価

株主区分の判定時期:株式譲渡後

譲受人に会社支配権有:原則的評価方式
譲受人に会社支配権無:特例的評価方式
(※譲渡人の株主区分は影響しません)

 

「税法上の時価よりも低い価額で譲渡した場合の課税関係」

株式譲受後に、譲受人が会社に対する支配権を有する(会社支配権の価値を享受している)にも関わらず、著しく低い価額で株式を取得した場合には、譲受人が支払った対価と、原則的評価方式による価額との差額につき、譲受人に贈与税が課税されます(相続税法第7条)。

 

参考
株主への利益移転①-相続税法第7条と第9条を区別せずに実務を行っていないか?

 

相続税法第7条(贈与又は遺贈により取得したものとみなす場合)
第七条 著しく低い価額の対価で財産の譲渡を受けた場合においては、当該財産の譲渡があつた時において、当該財産の譲渡を受けた者が、当該対価と当該譲渡があつた時における当該財産の時価(当該財産の評価について第三章に特別の定めがある場合には、その規定により評価した価額)との差額に相当する金額を当該財産を譲渡した者から贈与(当該財産の譲渡が遺言によりなされた場合には、遺贈)により取得したものとみなす。ただし、当該財産の譲渡が、その譲渡を受ける者が資力を喪失して債務を弁済することが困難である場合において、その者の扶養義務者から当該債務の弁済に充てるためになされたものであるときは、その贈与又は遺贈により取得したものとみなされた金額のうちその債務を弁済することが困難である部分の金額については、この限りでない。