非上場株式の譲渡時の時価⑭-法人から法人への譲渡時の時価と課税が生じる場合を整理せずに実務を行っていないか?

Q 法人から法人への非上場株式の譲渡時の時価と、課税が生じる場合(グループ法人税制の適用なし)について教えてくれますか?

A 法人間の取引ですので、法人税法上の時価が適用時価となります。

譲渡法人側では、株式譲渡後においても、会社に対する支配権を有するにも関わらず、時価よりも低い価額による譲渡を行った場合には、譲渡株式の帳簿価額と時価との差額が譲渡損益となり、譲渡対価と時価との差額は寄附金となります。

譲受法人側では、株式譲渡後において、会社に対する支配権を有するにも関わらず、時価よりも低い価額で株式を取得した場合には、支払対価と時価との差額は受贈益となります(発行法人を除く)。

解説
非上場株式の評価方式について、原則的評価方式となるか、特例的評価方式となるかは会社に対する支配力の有無で決定します。つまり、原則的評価方式と特例的評価方式の株価の差額は、会社に対する支配権の価値により生じています。

法人から法人への株式譲渡では、譲渡法人、譲受法人に適用される税務上の時価は、いずれも「法人税法上の時価」が基準となります。法人税法上の時価が適用される場合には、同族株主に該当するか否かの議決権割合による判定時期は「株式譲渡後」です。

したがって、譲渡法人の時価は、株式譲渡後において、譲渡法人側に会社に対する支配力があるかどうかにより、時価が原則的評価方式による価額となるか、特例的評価方式による価額となるかが決定します。

一方で、譲受法人側の時価は、株式譲渡後において、譲受法人側に会社に対する支配力があるかどうか(会社に対する支配権の価値を享受するかどうか)により、時価が原則的評価方式による価額となるか、特例的評価方式による価額となるかが決定します。

 

「適用時価、株主区分の判定時期、評価方式」

譲渡法人における適用時価:法人税法上の時価
譲受法人における適用時価:法人税法上の時価

譲渡法人における株主区分の判定時期:株式譲渡後
譲受法人における株主区分の判定時期:株式譲渡後

譲渡法人に会社支配権有:原則的評価方式(類似業種比準方式と純資産価額方式の折衷)
譲渡法人に会社支配権無:特例的評価方式
譲受法人に会社支配権有:原則的評価方式(類似業種比準方式と純資産価額方式の折衷)
譲受法人に会社支配権無:特例的評価方式

 

「税法上の時価よりも低い価額で譲渡した場合の課税関係」

譲渡法人は、株式譲渡後に、会社に対する支配権を有するにも関わらず、法人税法上の時価よりも低い価額で株式を譲渡した場合には、譲渡株式の帳簿価額と時価との差額が譲渡損益となります(法人税法第22条の2第4項)。また、受け取った対価と時価との差額は寄附金とされ、損金算入限度額を超える部分は損金算入できません(法人税法第37条第1項、第8項)。

譲受法人は、株式譲受後に、会社に対する支配権を有する(会社支配権の価値を享受している)にも関わらず、法人税法上の時価よりも低い価額で株式を取得した場合には、支払った対価と時価との差額は受贈益とされ、法人税が課税されます(法人税法第22条第2項)。

 

法人税法第22条第2項(各事業年度の所得の金額の計算の通則)

2 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする。

 

法人税法第22条の2第4項(益金の額の計算)

4 内国法人の各事業年度の資産の販売等に係る収益の額として第一項又は第二項の規定により当該事業年度の所得の金額の計算上益金の額に算入する金額は、別段の定め(前条第四項を除く。)があるものを除き、その販売若しくは譲渡をした資産の引渡しの時における価額又はその提供をした役務につき通常得べき対価の額に相当する金額とする。

 

法人税法第37条第1項、第8項(寄附金の損金不算入)

第三十七条 内国法人が各事業年度において支出した寄附金の額(次項の規定の適用を受ける寄附金の額を除く。)の合計額のうち、その内国法人の当該事業年度終了の時の資本金等の額又は当該事業年度の所得の金額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額を超える部分の金額は、当該内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。

8 内国法人が資産の譲渡又は経済的な利益の供与をした場合において、その譲渡又は供与の対価の額が当該資産のその譲渡の時における価額又は当該経済的な利益のその供与の時における価額に比して低いときは、当該対価の額と当該価額との差額のうち実質的に贈与又は無償の供与をしたと認められる金額は、前項の寄附金の額に含まれるものとする。