非上場株式の譲渡時の時価⑲-会社法における譲渡制限株式の価格決定方針が定められた条文を見逃していないか?
Q 会社法において、非上場株式の譲渡時の価格算定方法は定められていますか?
A 裁判所の価格決定方針のみが定められ、詳細な規定はありません。
解説
会社法では、譲渡制限株式を発行会社が買い取る場合においても、譲渡承認請求者との協議によって定めることとされており(会社法第144条第1項)、譲渡承認手続きに瑕疵がなければ、売買価格がいくらであったとしても問題にはなりません。
会社法において、譲渡制限株式の売買価格の算定方針について、唯一定めているのが、裁判所に対して売買価格の申立てがあった場合です。裁判所における売買価格の決定方針として、「譲渡等承認請求の時における株式会社の資産状態その他一切の事情を考慮しなければならない」と定めています(会社法第144条第3項)。
会社法第144条(売買価格の決定)
第百四十四条 第百四十一条第一項の規定による通知があった場合には、第百四十条第一項第二号の対象株式の売買価格は、株式会社と譲渡等承認請求者との協議によって定める。
2 株式会社又は譲渡等承認請求者は、第百四十一条第一項の規定による通知があった日から二十日以内に、裁判所に対し、売買価格の決定の申立てをすることができる。
3 裁判所は、前項の決定をするには、譲渡等承認請求の時における株式会社の資産状態その他一切の事情を考慮しなければならない。
4 第一項の規定にかかわらず、第二項の期間内に同項の申立てがあったときは、当該申立てにより裁判所が定めた額をもって第百四十条第一項第二号の対象株式の売買価格とする。
5 第一項の規定にかかわらず、第二項の期間内に同項の申立てがないとき(当該期間内に第一項の協議が調った場合を除く。)は、一株当たり純資産額に第百四十条第一項第二号の対象株式の数を乗じて得た額をもって当該対象株式の売買価格とする。
6 第百四十一条第二項の規定による供託をした場合において、第百四十条第一項第二号の対象株式の売買価格が確定したときは、株式会社は、供託した金銭に相当する額を限度として、売買代金の全部又は一部を支払ったものとみなす。
7 前各項の規定は、第百四十二条第一項の規定による通知があった場合について準用する。この場合において、第一項中「第百四十条第一項第二号」とあるのは「第百四十二条第一項第二号」と、「株式会社」とあるのは「指定買取人」と、第二項中「株式会社」とあるのは「指定買取人」と、第四項及び第五項中「第百四十条第一項第二号」とあるのは「第百四十二条第一項第二号」と、前項中「第百四十一条第二項」とあるのは「第百四十二条第二項」と、「第百四十条第一項第二号」とあるのは「同条第一項第二号」と、「株式会社」とあるのは「指定買取人」と読み替えるものとする。