株式の譲渡取引⑥-個人株主が株式を取得した日を整理せずに実務を行っていないか?
Q 個人株主が譲渡取引により株式を取得しましたが、取得日はいつになりますか?
A 引渡し日が原則となります。
解説
個人株主の株式の取得日は、収入すべき時期を定めた通達とは別規定である「取得をした日」の通達に従います。
「取得をした日」を定めた通達においても、原則として株式の引渡し日となる点、納税者の選択により契約日とすることが認められる点は、収入すべき時期を定めた通達と同様です(措置法通達37の10・37の11共-18(1))。
ただし、「取得をした日」を定めた通達では、対価を支払って取得した場合の定めがあり、対価を支払って取得した株式については、その払込み期日(払込みの期間が定められている場合には払込み日)が取得日となります(措置法通達37の10・37の11共-18(2))。
株式譲渡契約による取得以外で(組織再編や種類株式に定める権利行使など)、別途その取扱いが定められているものは、その取扱いに従います(措置法通達37の10・37の11共-1(3)〜(21))。
所得税基本通達37の10・37の11共-18(「取得をした日」の判定)
一般株式等に係る譲渡所得等の金額又は上場株式等に係る譲渡所得等の金額を計算する場合における株式等の「取得をした日」の判定は、次による。(平27課資3-4、課個2-19、課法10-5、課審7-13追加、平29課資3-4、課個2-20、課法10-4、課審7-14、令3課資3-5、課個2-8、課法11-25、課審7-11改正)
(1) 他から取得した株式等は、引渡しがあった日による。ただし、納税者の選択により、当該株式等の取得に関する契約の効力発生の日を取得をした日として申告があったときは、これを認める。
(2) 金銭の払込み又は財産の給付(以下「払込み等」という。)により取得した株式等は、その払込み等の期日(払込み等の期間が定められている場合には払込み等を行った日)による。
(3) 取締役の報酬等(会社法第361条第1項《取締役の報酬等》に規定する報酬等をいう。)として取得する株式等で、同法第202条の2第1項《取締役の報酬等に係る募集事項の決定の特則》の規定により払込み等を要しないものは、同項第2号の割当日による。
(4) 新株予約権(新投資口予約権を含む。以下この項において同じ。)の行使(新株予約権付社債に係る新株予約権の行使を含む。)により取得した株式等は、その新株予約権を行使した日による。
(5) 株式等の分割又は併合により取得した株式等及び株主割当てにより取得(所得税法令第111条第1項《株主割当てにより取得した株式の取得価額》に規定する旧株の数に応じて割り当てられた株式等を取得した場合をいう。)した株式等は、その取得の基因となった株式等の「取得をした日」による。
(6) 株式無償割当てにより取得した株式等は、その取得の基因となった株式等の「取得をした日」による。ただし、当該株式無償割当ての基因となった株式等と異なる種類の株式等が割り当てられた場合には、当該株式無償割当ての効力を生ずる日による。
(7) 新株予約権無償割当て(新投資口予約権無償割当てを含む。)により取得した新株予約権は、当該新株予約権無償割当ての効力を生ずる日による。
(8) 法人の合併又は法人の分割により取得した株式等は、その取得の基因となった株式等の「取得をした日」による。ただし、措置法第37条の10第3項第1号若しくは第2号(措置法第37条の11第3項の規定により上場株式等に係る譲渡所得等に係る収入金額とみなされる場合を含む。)又は第37条の14の3第1項若しくは第2項の規定により、一般株式等に係る譲渡所得等又は上場株式等に係る譲渡所得等に係る収入金額とみなされることとなる金額がある場合における法人の合併又は法人の分割により取得した株式等は、その契約において定めたその効力を生ずる日(新設合併又は新設分割の場合は、新設合併設立会社又は新設分割設立会社の設立登記の日)による。
(9) 株式分配(法人税法(昭和40年法律第34号)第2条第12号の15の2《定義》に規定する株式分配をいう。以下この項において同じ。)により取得した株式等は、その取得の基因となった株式等の「取得をした日」による。ただし、措置法第37条の10第3項第3号(措置法第37条の11第3項の規定により上場株式等に係る譲渡所得等に係る収入金額とみなされる場合を含む。)又は第37条の14の3第3項の規定により、一般株式等に係る譲渡所得等又は上場株式等に係る譲渡所得等に係る収入金額とみなされることとなる金額がある場合における株式分配により取得した株式等は、当該株式分配について定めたその効力を生ずる日(その効力を生ずる日を定めていない場合には、当該株式分配を行う法人の社員総会その他正当な権限を有する機関の決議があった日)による。
(10) 投資信託(所得税法第2条第1項第12号の2《定義》に規定する投資信託をいう。)又は特定受益証券発行信託(同項第15号の5に規定する特定受益証券発行信託をいう。以下同じ。)(以下この項において「投資信託等」という。)の受益権に係る投資信託等の信託の併合により取得した受益権は、その取得の基因となった投資信託等の受益権の「取得をした日」による。ただし、措置法第37条の10第4項第1号若しくは第2号又は第37条の11第4項第1号の規定により、一般株式等に係る譲渡所得等又は上場株式等に係る譲渡所得等に係る収入金額とみなされることとなる金額がある場合における投資信託等の信託の併合により取得した受益権は、その契約において定めたその効力を生ずる日による。
(11) 特定受益証券発行信託の受益権に係る特定受益証券発行信託の信託の分割により取得した受益権は、その取得の基因となった特定受益証券発行信託の受益権の「取得をした日」による。ただし、措置法第37条の10第4項第3号又は第37条の11第4項第2号の規定により、一般株式等に係る譲渡所得等又は上場株式等に係る譲渡所得等に係る収入金額とみなされることとなる金額がある場合における特定受益証券発行信託の信託の分割により取得した受益権は、その契約において定めたその効力を生ずる日による。
(12) 組織変更により取得した株式等は、その取得の基因となった株式等の「取得をした日」による。ただし、措置法第37条の10第3項第7号(措置法第37条の11第3項の規定により上場株式等に係る譲渡所得等に係る収入金額とみなされる場合を含む。)の規定により、一般株式等に係る譲渡所得等又は上場株式等に係る譲渡所得等に係る収入金額とみなされることとなる金額がある場合における組織変更により取得した株式等は、組織変更において定めたその効力を生ずる日による。
(13) 株式交換により取得した株式等は、その契約において定めたその効力を生ずる日による。
(14) 株式移転により取得した株式等は、株式移転完全親法人の設立登記の日による。
(15) 株式交付により取得した株式等は、株式交付計画に定められた株式交付がその効力を生ずる日による。
(16) 取得請求権付株式の請求権の行使の対価として交付された株式等は、当該請求権の行使をした日による。
(17) 取得条項付株式(取得条項付新株予約権及び取得条項付新株予約権が付された新株予約権付社債を含む。)の取得対価として交付された株式等は、取得事由が生じた日(当該取得条項付株式を発行する法人が当該取得事由の発生により当該取得条項付株式の一部を取得することとするときは、当該取得事由が生じた日と取得の対象となった株主等への当該株式等を取得する旨の通知又は公告の日から2週間を経過した日のいずれか遅い日)による。
(18) 全部取得条項付種類株式の取得対価として交付された株式等は、全部取得条項付種類株式に係る取得決議において定めた会社が全部取得条項付種類株式を取得する日による。
(19) 信用取引の買建てにより取得していた株式等をいわゆる現引きにより取得した場合には、当該買建ての際における(1)の日による。
(20) 上場株式等償還特約付社債の償還により取得した株式等は、その償還の日による。
(21) 金融商品取引法第28条第8項第3号ハ《通則》に掲げる取引による権利の行使又は義務の履行により取得した株式等は、当該取引の対象株式等の売買に係る決済の日による。ただし、納税者の選択により、その権利の行使の日又は義務の履行の日を取得をした日として申告があったときは、これを認める。
(注) 所得税法第60条第1項《贈与等により取得した資産の取得費等》の規定は、株式等についても適用されることに留意する。