株式の譲渡取引⑧-法人株主の株式取得価額と譲渡時の1株あたりの譲渡原価の算出方法を整理せずに実務を行っていないか?
Q 法人株主が譲渡取引により株式を取得後、すぐに数株を譲渡しました。株式の取得価額の取扱いと、その株式を譲渡する際の1株あたりの譲渡原価の算出方法を教えてくれますか?
A 取得価額は支払った対価と付随費用の合計となり、1株あたり譲渡原価は移動平均法で算出します。
解説
法人株主の株式の取得価額は、「株式購入の代価に購入手数料その他購入のために要した費用を加算した金額」となります(法人税法施行令第119条第1項第1号)。
取得した株式を譲渡する場合に、譲渡原価の計算における一単位当たりの帳簿価額の法定算出方法は、移動平均法となりますが、届出書の提出によって総平均法も選択できます(法人税法施行令第119条の2第1項、法人税法施行令第119条の7)。
法人税法施行令第119条第1項第1号(有価証券の取得価額)
第百十九条 内国法人が有価証券の取得をした場合には、その取得価額は、次の各号に掲げる有価証券の区分に応じ当該各号に定める金額とする。
一 購入した有価証券(法第六十一条の四第三項(有価証券の空売り等に係る利益相当額又は損失相当額の益金又は損金算入等)又は第六十一条の五第三項(デリバティブ取引に係る利益相当額又は損失相当額の益金又は損金算入等)の規定の適用があるものを除く。) その購入の代価(購入手数料その他その有価証券の購入のために要した費用がある場合には、その費用の額を加算した金額)
法人税法施行令第119条の2第1項(有価証券の一単位当たりの帳簿価額の算出の方法)
第百十九条の二 有価証券の譲渡に係る原価の額を計算する場合におけるその一単位当たりの帳簿価額の算出の方法は、次に掲げる方法とする。
一 移動平均法(有価証券をその銘柄の異なるごとに区別し、その銘柄を同じくする有価証券の取得(適格合併又は適格分割型分割による被合併法人又は分割法人からの引継ぎを含むものとし、被合併法人等の新株等の取得を除く。以下この項において同じ。)をする都度その有価証券のその取得の直前の帳簿価額とその取得をした有価証券の取得価額(当該引継ぎを受けた有価証券については、当該被合併法人又は分割法人の法第六十二条の二第一項(適格合併及び適格分割型分割による資産等の帳簿価額による引継ぎ)に規定する時又は当該適格分割型分割の直前の帳簿価額。次号において同じ。)との合計額をこれらの有価証券の総数で除して平均単価を算出し、その算出した平均単価をもつてその一単位当たりの帳簿価額とする方法をいう。)
二 総平均法(有価証券を前号と同様に区別し、その銘柄の同じものについて、当該事業年度開始の時において有していたその有価証券の帳簿価額と当該事業年度において取得をしたその有価証券の取得価額の総額との合計額をこれらの有価証券の総数で除して平均単価を算出し、その算出した平均単価をもつてその一単位当たりの帳簿価額とする方法をいう。)
法人税法施行令第119条の7(有価証券の一単位当たりの帳簿価額の法定算出方法)
第百十九条の七 法第六十一条の二第一項第二号(有価証券の譲渡原価の額)に規定する政令で定める方法は、第百十九条の二第一項第一号(移動平均法)に掲げる移動平均法とする。
2 税務署長は、内国法人が有価証券につき選定した一単位当たりの帳簿価額の算出の方法(その方法を届け出なかつた内国法人がよるべきこととされている前項に規定する方法を含む。)によりその一単位当たりの帳簿価額を算出しなかつた場合において、その内国法人が行つた算出の方法が第百十九条の二第一項各号に掲げる方法のうちいずれかの方法に該当し、かつ、その行つた方法によつてもその内国法人の各事業年度の所得の金額の計算を適正に行うことができると認めるときは、その方法により計算した各事業年度の所得の金額を基礎として更正又は決定(国税通則法第二十五条(決定)の規定による決定をいう。)をすることができる。