株式の譲渡取引⑨-個人株主の株式取得価額と譲渡時の1株あたりの譲渡原価の算出方法を整理せずに実務を行っていないか?

Q 個人株主が譲渡取引により株式を取得後、すぐに数株を譲渡しました。株式の取得価額の取扱いと、その株式を譲渡する際の1株あたりの譲渡原価の算出方法を教えてくれますか?

A 取得価額は支払った対価と付随費用の合計となり、1株あたり譲渡原価は総平均法で算出します。

解説
個人株主の株式の取得価額は、「株式購入の代価に購入手数料その他購入のために要した費用を加算した金額」となります(所得税法施行令第109条第1項第5号、措置法通達37の10・37の11共-10)。

取得した株式を譲渡する場合に、譲渡原価の計算における一単位当たりの帳簿価額の法定算出方法は、総平均法となりますが、届出書の提出によって移動平均法も選択できます(所得税法施行令第105条第1項、第106条、第107条、第108条)。

二回以上にわたって取得した同一銘柄の有価証券については、有価証券を最初に取得した時(その後既に当該有価証券の譲渡をしている場合には、直前の譲渡の時。)から、当該譲渡の時までの期間を基礎として、最初に取得した時において有していた当該有価証券及び当該期間内に取得した当該有価証券につき第百五条第一項第一号(総平均法)に掲げる総平均法に準ずる方法によって算出した一単位当たりの金額により計算した金額となります(所得税法施行令第118条)。

 

所得税法施行令第109条第1項第5号(有価証券の取得価額)
第百九条 第百五条第一項(有価証券の評価の方法)の規定による有価証券の評価額の計算の基礎となる有価証券の取得価額は、別段の定めがあるものを除き、次の各号に掲げる有価証券の区分に応じ当該各号に定める金額とする。
五 購入した有価証券(第三号に該当するものを除く。) その購入の代価(購入手数料その他その有価証券の購入のために要した費用がある場合には、その費用の額を加算した金額)

 

措置法通達37の10・37の11共-10(株式等の購入費用)
所得税法令第109条第1項第5号に規定する「購入のために要した費用」とは、株式等を購入するに当たって支出した買委託手数料(当該委託手数料に係る消費税及び地方消費税を含む。)、交通費、通信費、名義書換料等をいう。

 なお、利付公社債(既発債)を購入する場合に、直前の利払期からその購入の時までの期間に応じた経過利子に相当する額として、売買価額に含めて譲渡者に対して支払われる金額については、その利付公社債の取得価額に含まれることに留意する。(平27課資3-4、課個2-19、課法10-5、課審7-13追加、平28課資3-4、課個2-33、課審7-11、徴管6-24改正)

 

所得税法施行令第105条(有価証券の評価の方法)
第百五条 法第四十八条第一項(有価証券の譲渡原価等の計算及びその評価の方法)の規定によるその年十二月三十一日(同項の居住者が年の中途において死亡し又は出国をした場合には、その死亡又は出国の時。以下この条において同じ。)において有する有価証券(以下この項において「期末有価証券」という。)の評価額の計算上選定をすることができる評価の方法は、期末有価証券につき次に掲げる方法のうちいずれかの方法によつてその取得価額を算出し、その算出した取得価額をもつて当該期末有価証券の評価額とする方法とする。

一 総平均法(有価証券をその種類及び銘柄(以下この項において「種類等」という。)の異なるごとに区別し、その種類等の同じものについて、その年一月一日において有していた種類等を同じくする有価証券の取得価額の総額とその年中に取得した種類等を同じくする有価証券の取得価額の総額との合計額をこれらの有価証券の総数で除して計算した価額をその一単位当たりの取得価額とする方法をいう。)
二 移動平均法(有価証券をその種類等の異なるごとに区別し、その種類等の同じものについて、当初の一単位当たりの取得価額が、種類等を同じくする有価証券を再び取得した場合にはその取得の時において有する当該有価証券とその取得した有価証券との数及び取得価額を基礎として算出した平均単価によつて改定されたものとみなし、以後種類等を同じくする有価証券を取得する都度同様の方法により一単位当たりの取得価額が改定されたものとみなし、その年十二月三十一日から最も近い日において改定されたものとみなされた一単位当たりの取得価額をその一単位当たりの取得価額とする方法をいう。)

 

所得税法施行令第106条(有価証券の評価の方法の選定)
第百六条 有価証券の評価の方法は、その種類ごとに選定しなければならない。
2 居住者は、事業所得の基因となる有価証券を取得した場合(その取得した日の属する年の前年以前においてその有価証券と種類を同じくする有価証券で事業所得の基因となるものにつきこの項の規定による届出をすべき場合を除く。)には、同日の属する年分の所得税に係る確定申告期限までに、その有価証券と種類を同じくする有価証券につき、前条第一項に規定する評価の方法のうちそのよるべき方法を書面により納税地の所轄税務署長に届け出なければならない。

 

所得税法施行令第107条(有価証券の評価の方法の変更手続)
第百七条 居住者は、有価証券につき選定した評価の方法(その評価の方法を届け出なかつた者がよるべきこととされている次条第一項に規定する評価の方法を含む。)を変更しようとするときは、納税地の所轄税務署長の承認を受けなければならない。
2 第百一条第二項から第五項まで(たな卸資産の評価の方法の変更手続)の規定は、前項の場合について準用する。 

 

所得税法施行令第108条(有価証券の法定評価方法)
第百八条 法第四十八条第一項(有価証券の譲渡原価等の計算及びその評価の方法)に規定する政令で定める方法は、第百五条第一項第一号(総平均法)に掲げる総平均法により算出した取得価額による評価の方法とする。
2 税務署長は、居住者が有価証券につき選定した評価の方法(その評価の方法を届け出なかつた居住者がよるべきこととされている前項に規定する評価の方法を含む。以下この項において同じ。)により評価しなかつた場合において、その居住者が行つた評価の方法がその居住者の選定した評価の方法以外の第百五条第一項に規定する評価の方法に該当し、かつ、その行つた評価の方法によつてもその居住者の各年分の事業所得の金額の計算を適正に行うことができると認めるときは、その行つた評価の方法により計算した各年分の事業所得の金額を基礎として更正又は決定をすることができる。

 

所得税法施行令第118条(譲渡所得の基因となる有価証券の取得費等)
第百十八条 居住者が法第四十八条第三項(譲渡所得の基因となる有価証券の取得費等の計算)に規定する二回以上にわたつて取得した同一銘柄の有価証券で雑所得又は譲渡所得の基因となるものを譲渡した場合には、その譲渡につき法第三十七条第一項(必要経費)の規定によりその者のその譲渡の日の属する年分の雑所得の金額の計算上必要経費に算入する金額又は法第三十八条第一項(譲渡所得の金額の計算上控除する取得費)の規定によりその者の当該年分の譲渡所得の金額の計算上取得費に算入する金額は、当該有価証券を最初に取得した時(その後既に当該有価証券の譲渡をしている場合には、直前の譲渡の時。以下この項において同じ。)から当該譲渡の時までの期間を基礎として、当該最初に取得した時において有していた当該有価証券及び当該期間内に取得した当該有価証券につき第百五条第一項第一号(総平均法)に掲げる総平均法に準ずる方法によつて算出した一単位当たりの金額により計算した金額とする。

2 第百九条から前条までの規定は、前項に規定する所得の基因となる有価証券について準用する。

 

国税庁タックスアンサー(No.1464 譲渡した株式等の取得費)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1464.htm