非上場株式の公益財団への寄附⑨-寄附者が財団の理事となっている場合に、特別利害関係人に該当すると考えていないか?
Q上場会社の創業家は、当該上場株式の保有を個人から資産管理会社に移管しています。 また、創業家を中心として公益財団法人(公益的事業:奨学金事業)を設立し、先代が理事長を務めています。資産管理会社の主要株主となっている先代が、当該資産管理会社株式を寄附しますが、公益財団法人の理事会決議において、理事長である先代は議決に加わることができますか?
Aできます。
解説
理事会の決議に特別の利害関係を有する理事は議決に加わることはできません(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第95条第2項)。特別の利害関係を有するかどうかは、法律で明確になっていませんが、「特別の利害関係を有する取締役(会社法369条第2項)に関する判例」で、取締役から会社に対する負担のない贈与の場合には、当該取締役は特別の利害関係を有する取締役に該当しないと判示されています(大判大正13年9月28日)。また、会社が取締役から無利息・無担保の貸付を受ける場合には、会社に損害が生じない取引であるため、当該取締役は特別の利害関係を有する取締役に該当しないと判示されています(最判昭和38年12月6日判決)。当該判例の考え方に基づくと、株式の寄贈を受ける公益財団法人に損害が生じることはないため、先代も理事会の決議に参加できると考えます。
一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第95条第2項(理事会の決議)
第九十五条 理事会の決議は、議決に加わることができる理事の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)が出席し、その過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)をもって行う。
2 前項の決議について特別の利害関係を有する理事は、議決に加わることができない。
会社法第369条第2項(取締役会の決議)
第三百六十九条 取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)が出席し、その過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)をもって行う。
2 前項の決議について特別の利害関係を有する取締役は、議決に加わることができない。