株式の譲渡取引⑫-法人が株式を発行法人に譲渡する場合のみなし配当にかかる益金不算入規定を整理せずに実務を行っていないか?

Q 法人が株式を発行法人に譲渡する場合のみなし配当にかかる益金不算入規定について教えてくれますか?

A 譲渡対価の支払日の前日の株式保有状況で、みなし配当にかかる益金不算入割合が決定します。ただし、譲渡する株式が「取得予定株式」に該当する場合には、益金不算入規定の適用はできません。

解説
法人が株式を発行法人に譲渡する場合にみなし配当が生じる場合には、発行法人による譲渡対価の支払いの効力が発生する日の前日における株式の保有状況によって、「完全子法人株式」、「関連法人株式」、「非支配目的株式」、「その他の株式」のいずれに該当するかを判定して、配当の益金不算入規定を適用します(法人税法施行令第22条の2第1項、第22条の3第2項、第22条の3第1項 ※全て括弧書き)。

ただし、譲渡する株式が「取得予定株式」に該当する場合には、みなし配当に益金不算入規定の適用はありません(法人税法第23条第3項、法人税基本通達3-1-8)。

 

法人税法施行令第22条の2第1項(完全子法人株式等の範囲)

第二十二条の二 法第二十三条第五項(受取配当等の益金不算入)に規定する政令で定めるものは、同条第一項に規定する配当等の額(以下この条において「配当等の額」という。)の計算期間の初日から当該計算期間の末日まで継続して法第二十三条第五項の内国法人とその支払を受ける配当等の額を支払う他の内国法人(公益法人等及び人格のない社団等を除く。)との間に完全支配関係があつた場合(当該内国法人が当該計算期間の中途において当該他の内国法人との間に完全支配関係を有することとなつた場合において、当該計算期間の初日から当該完全支配関係を有することとなつた日まで継続して当該他の内国法人と他の者との間に当該他の者による完全支配関係があり、かつ、同日から当該計算期間の末日まで継続して当該内国法人と当該他の者との間及び当該他の内国法人と当該他の者との間に当該他の者による完全支配関係があつたときを含む。)の当該他の内国法人の株式等(その支払を受ける配当等の額が法第二十四条第一項(配当等の額とみなす金額)の規定により法第二十三条第一項第一号又は第二号に掲げる金額とみなされる金額であるときは、当該金額の支払に係る効力が生ずる日(法第二十四条第三項の規定により交付を受けたものとみなされる同項の株式の価額のうち同条第一項の規定により法第二十三条第一項第一号に掲げる金額とみなされる金額にあつては、法第二十四条第三項の合併又は分割型分割の日。以下第二十二条の三の二までにおいて同じ。)の前日において当該内国法人と当該他の内国法人との間に完全支配関係があつた場合の当該他の内国法人の株式等)とする。

 

法人税法施行令第22条の3第2項(関連法人株式等の範囲)

2 前項に規定する計算期間とは、その配当等の額の支払を受ける直前に当該配当等の額を支払う他の内国法人により支払われた配当等の額(適格現物分配又は適格株式分配に係るものを含む。)の支払に係る基準日の翌日(次の各号に掲げる場合には、当該各号に定める日)からその支払を受ける配当等の額の支払に係る基準日(当該配当等の額が法第二十四条第一項(配当等の額とみなす金額)(同項第二号に掲げる分割型分割、同項第三号に掲げる株式分配又は同項第四号に規定する資本の払戻しに係る部分を除く。)の規定により法第二十三条第一項第一号又は第二号に掲げる金額とみなされる金額である場合には、その支払に係る効力が生ずる日の前日。以下この項において同じ。)までの期間をいう。

 

法人税法施行令第22条の3の2第1項(非支配目的株式等の範囲)

第二十二条の三の二 法第二十三条第七項(受取配当等の益金不算入)に規定する政令で定める場合は、同項の内国法人が、同項に規定する他の内国法人(以下この項及び次項において「他の内国法人」という。)の発行済株式又は出資(当該他の内国法人が有する自己の株式等を除く。)の総数又は総額の百分の五以下に相当する数又は金額の当該他の内国法人の株式等を、当該内国法人が当該他の内国法人から受ける同条第一項に規定する配当等の額の支払に係る基準日(当該配当等の額が法第二十四条第一項(配当等の額とみなす金額)(同項第二号に掲げる分割型分割、同項第三号に掲げる株式分配又は同項第四号に規定する資本の払戻しに係る部分を除く。)の規定により法第二十三条第一項第一号又は第二号に掲げる金額とみなされる金額である場合には、その支払に係る効力が生ずる日の前日)において有する場合とする。

 

法人税法第23条第3項

3 第一項の規定は、内国法人がその受ける配当等の額(第二十四条第一項(第五号に係る部分に限る。)の規定により、その内国法人が受ける配当等の額とみなされる金額に限る。以下この項において同じ。)の元本である株式等でその配当等の額の生ずる基因となる同号に掲げる事由が生ずることが予定されているものの取得(適格合併又は適格分割型分割による引継ぎを含む。)をした場合におけるその取得をした株式等に係る配当等の額(その予定されていた事由(第六十一条の二第十七項(有価証券の譲渡益又は譲渡損の益金又は損金算入)の規定の適用があるものを除く。)に基因するものとして政令で定めるものに限る。)については、適用しない。

 

法人税法施行令第20条(益金の額に算入される配当等の額)

第二十条 法第二十三条第三項(受取配当等の益金不算入)に規定する政令で定めるものは、同項の内国法人の受ける同項に規定する取得をした株式等(第一号において「取得株式等」という。)に係る配当等の額(法第二十四条第一項(第五号に係る部分に限る。)(配当等の額とみなす金額)の規定により、当該内国法人が受ける法第二十三条第一項に規定する配当等の額とみなされる金額をいう。以下この条において同じ。)で、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定めるものとする。

一 当該取得株式等が適格合併、適格分割又は適格現物出資により被合併法人、分割法人又は現物出資法人(以下この号において「被合併法人等」という。)から移転を受けたものである場合 法第二十三条第三項に規定する予定されていた事由が当該被合併法人等の当該取得株式等の取得の時においても生ずることが予定されていた場合における当該事由に基因する配当等の額
二 前号に掲げる場合以外の場合 法第二十三条第三項に規定する予定されていた事由に基因する配当等の額

 

法人税基本通達3-1-8(自己株式等の取得が予定されている株式等)

法第23条第3項《自己株式の取得が予定された株式に係る受取配当等の益金不算入の不適用》に規定する「その配当等の額の生ずる基因となる同号に掲げる事由が生ずることが予定されているもの」とは、法人が取得する株式等について、その株式等の取得時において法第24条第1項第5号《自己株式等の取得》に掲げる事由が生ずることが予定されているものをいうことから、例えば、上場会社等が自己の株式の公開買付けを行う場合における公開買付期間(金融商品取引法第27条の5に規定する「公開買付期間」をいう。以下3-1-8において同じ。)中に、法人が当該株式を取得したときの当該株式がこれに該当する。(平22年課法2-1「十」により追加、平27年課法2-8「五」、平29年課法2-17「十」により改正)

(注) 法人が、公開買付けを行っている会社の株式をその公開買付期間中に取得した場合において、当該株式についてその公開買付けによる買付けが行われなかったときには、その後当該株式に法第24条第1項第5項に掲げる事由が生じたことにより同項に規定する配当等の額を受けたとしても、当該配当等の額については法第23条第3項の規定の適用がないことに留意する。