株式の譲渡取引⑬-令和4年4月1日より適用される受取配当等の益金不算入規定の改正点を見逃していないか?

Q 法人が株式を発行法人に譲渡する場合に、みなし配当にかかる益金不算入規定が適用できると聞きました。受取配当等の益金不算入規定における税制改正の影響があれば教えてくれますか?

A 令和4年4月1日以後は、「関連法人株式」、「非支配目的株式」の区分上、100%グループ内で株式を分散保有している場合に、他の100%グループ法人の保有する株式も合算して、株式保有割合を判定することになります。
また、関連法人株式の控除負債利子は、関連法人株式にかかる配当額の4%(負債利子の合計額の10%を上限)となります。

解説
法人が株式を発行法人に譲渡する場合にみなし配当が生じる場合には、発行法人による譲渡対価の支払いの効力が発生する日の前日における株式の保有状況によって、「完全子法人株式」、「関連法人株式」、「非支配目的株式」、「その他の株式」のいずれに該当するかを判定して、配当の益金不算入規定を適用する点は、令和4年4月1日以降も同様です。

ただし、令和4年4月1日以降は、以下2点の変更に留意が必要です。

①「関連法人株式」、「非支配目的株式」の区分上、配当を受ける内国法人との間に完全支配関係がある他の法人を含めて、その内国法人の発行済株式総数(自己株式を除く)に占める株式保有割合を判定する(法人税法第23条第4項、第6項)。

②関連法人株式の控除負債利子は、関連法人株式にかかる配当額の4%(負債利子の合計額の10%を上限)して計算する(法人税法施行令第19条第1項、第2項)。

 

以下の法律及び政令は、令和4年4月1日から施行されます。

法人税法第23条第4項、第6項(受取配当等の益金不算入)

4 第一項に規定する関連法人株式等とは、内国法人(当該内国法人との間に完全支配関係がある他の法人を含む。)が他の内国法人(公益法人等及び人格のない社団等を除く。)の発行済株式又は出資(当該他の内国法人が有する自己の株式等を除く。)の総数又は総額の三分の一を超える数又は金額の株式等を有する場合として政令で定める場合における当該他の内国法人の株式等(前項に規定する完全子法人株式等を除く。)をいう。
6 第一項に規定する非支配目的株式等とは、内国法人(当該内国法人との間に完全支配関係がある他の法人を含む。)が他の内国法人(公益法人等及び人格のない社団等を除く。)の発行済株式又は出資(当該他の内国法人が有する自己の株式等を除く。)の総数又は総額の百分の五以下に相当する数又は金額の株式等を有する場合として政令で定める場合における当該他の内国法人の株式等(第五項に規定する完全子法人株式等を除く。)をいう。

 

法人税法施行令第19条第1項、第2項(関連法人株式等に係る配当等の額から控除する利子の額)
第十九条 法第二十三条第一項(受取配当等の益金不算入)に規定する政令で定めるところにより計算した金額は、同項に規定する配当等の額(次項及び第四項において「配当等の額」という。)の百分の四に相当する金額とする

2  前項の場合において、法第二十三条第一項の内国法人の第一号に掲げる金額が第二号に掲げる金額以下であるときは、関連法人株式等(同条第四項に規定する関連法人株式等をいう。以下この項及び第四項において同じ。)につき当該内国法人が同条第一項の規定の適用を受ける事業年度(以下この条において「適用事業年度」という。)において受ける配当等の額に係る同項に規定する政令で定めるところにより計算した金額は、前項の規定にかかわらず、当該適用事業年度に係る支払利子等の額(法人が支払う負債の利子又は手形の割引料、第百三十六条の二第一項(金銭債務の償還差損益)に規定する満たない部分の金額その他経済的な性質が利子に準ずるものの額をいう。第一号及び第四項において同じ。)の合計額の百分の十に相当する金額に当該配当等の額が当該適用事業年度において受ける関連法人株式等に係る配当等の額の合計額のうちに占める割合を乗じて計算した金額とする。
一 当該適用事業年度に係る支払利子等の額の合計額の百分の十に相当する金額
二 当該適用事業年度において受ける関連法人株式等に係る配当等の額の合計額の百分の四に相当する