株式の譲渡取引⑰-相続した株式と同一銘柄の株式を有している場合の株式譲渡について、取得費加算の考え方を整理せずに実務を行っていないか?
Q 相続により100株を取得した者が、同一銘柄の株式を元々100株保有している場合に、相続後に100株譲渡した際に、相続税の取得費加算の特例が適用できるか教えてくれますか?
A 適用できます。
解説
相続又は遺贈により財産を取得して相続税を課税された人が、相続の開始があった日の翌日から相続税の申告書の提出期限の翌日以後3年を経過する日までの間に、相続税の課税の対象となった株式を譲渡した場合においては、その譲渡した株式を取得するために支払った相続税を取得費に加算できます。
相続人が相続した株式と同一銘柄の株式を有している場合において、取得費加算の特例の適用期間内に、これらの株式の一部を譲渡したときには、相続により取得した株式の譲渡から行ったものとして取得費加算の適用が認められます(措置法通達39−12)。
先に取得した株式から順次譲渡したものとするのが、株式の譲渡に関する原則的な取扱いですので、取得費加算の特例は例外として認められています(所得税基本通達33−6の4)。
措置法通達39−12(同一銘柄の株式を譲渡した場合の適用関係)
39-12 譲渡所得の基因となる株式(株主又は投資主となる権利、株式の割当てを受ける権利、新株予約権(新投資口予約権を含む。以下この項において同じ。)及び新株予約権の割当てを受ける権利を含む。以下この項において同じ。)を相続等により取得した個人が、当該株式と同一銘柄の株式を有している場合において、措置法第39条第1項に規定する特例適用期間内に、これらの株式の一部を譲渡したときには、当該譲渡については、当該相続等により取得した株式の譲渡からなるものとして、同項の規定を適用して差し支えない。(平18課資3-12、課個2-20、課審6-12、平26課資3-8、課個2-15、課審7-15、平27課資3-4、課個2-19、課法10-5、課審7-13改正)
所得税基本通達33−6の4(有価証券の譲渡所得が短期譲渡所得に該当するかどうかの判定)
33-6の4 譲渡所得の基因となる有価証券を譲渡した場合において、当該有価証券と同一銘柄の有価証券を当該譲渡の日前5年前及び当該譲渡の日前5年以内に取得しているときは、当該譲渡した有価証券は先に取得したものから順次譲渡したものとして、当該有価証券のうちに法第33条第3項第1号に掲げる所得の基因となる有価証券が含まれているかどうかを判定する。この場合において、株式の分割又は併合により取得した有価証券、株主割当てにより取得(令第111条第1項に規定する旧株の数に応じて割り当てられた株式を取得した場合及び同条第2項に規定する旧株を発行した法人の株式無償割当てにより割り当てられた株式を取得した場合をいう。)した有価証券及び法人の合併、法人の分割、株式分配(法人税法第2条第12号の15の2《定義》に規定する株式分配をいう。以下この項において同じ。)又は組織変更により取得した有価証券(措置法第37条の10第3項、第37条の11第3項又は第37条の14の3第1項から第3項まで《合併等により外国親法人株式等の交付を受ける場合の課税の特例》の規定により一般株式等に係る譲渡所得等又は上場株式等に係る譲渡所得等に係る収入金額とみなされることとなる金額がある場合における法人の合併、法人の分割、株式分配又は組織変更により取得した有価証券を除く。)の取得の日は、その取得の基因となった有価証券の取得の日とする。(平元直所3-14、直法6-9、直資3-8追加、平13課資3-2、課個2-24、課審5-5、平17課資3-7、課個2-25、課審6-13、平18課資3-12、課個2-20、課審6-12、平19課資3-5、課個2-15、課審6-9、平27課資3-4、課個2-19、課法10-5、課審7-13、平29課資3-4、課個2-20、課法10-4、課審7-14改正)
(注) | 1 | 株式無償割当てのうち、旧株と異なる種類の株式の割当てを受けた場合の取得の日は、当該株式無償割当ての効力を生ずる日となることに留意する。 |
2 | 当該譲渡した有価証券の取得費は、令第118条《譲渡所得の基因となる有価証券の取得費等》の規定により計算することに留意する。 |