株式の譲渡取引⑲-上場株式の損益通算と繰越控除の規定を確認せずに実務を行っていないか?

Q 個人株主が上場株式を譲渡し、譲渡損が発生しましたが、所得計算をする上で特別な規定があれば教えてくれますか?

A 上場株式の譲渡損は、上場株式の譲渡益だけでなく、上場株式等の配当、特定公社債等の利子との損益通算が可能です。また、翌年以後3年間の繰越ができます。

解説
上場株式の譲渡損は、上場株式の譲渡益から控除することができるだけでなく、「上場株式等の配当等」に規定される、上場株式の配当、特定公社債等の利子との損益通算が可能です(租税特別措置法第37条の12の2第1項、租税特別措置法第8条の4)。
また、上場株式の譲渡損で控除しきれなかった金額があれば、確定申告をすることで、翌年以後3年間の繰越が可能です(租税特別措置法第37条の12の2第5項)。

 

租税特別措置法第37条の12の2第1項、第5項(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除)

第三十七条の十二の二 確定申告書(第九項(第三十七条の十三の二第十項において準用する場合を含む。)において準用する所得税法第百二十三条第一項(同法第百六十六条において準用する場合を含む。)の規定による申告書を含む。以下この条において同じ。)を提出する居住者又は恒久的施設を有する非居住者の平成二十八年分以後の各年分の上場株式等に係る譲渡損失の金額がある場合には、第三十七条の十一第一項後段の規定にかかわらず、当該上場株式等に係る譲渡損失の金額は、当該確定申告書に係る年分の第八条の四第一項に規定する上場株式等に係る配当所得等の金額を限度として、当該年分の当該上場株式等に係る配当所得等の金額の計算上控除する。
5 確定申告書を提出する居住者又は恒久的施設を有する非居住者が、その年の前年以前三年内の各年において生じた上場株式等に係る譲渡損失の金額(この項の規定の適用を受けて前年以前において控除されたものを除く。)を有する場合には、第三十七条の十一第一項後段の規定にかかわらず、当該上場株式等に係る譲渡損失の金額に相当する金額は、政令で定めるところにより、当該確定申告書に係る年分の同項に規定する上場株式等に係る譲渡所得等の金額及び第八条の四第一項に規定する上場株式等に係る配当所得等の金額(第一項の規定の適用がある場合にはその適用後の金額。以下この項において同じ。)を限度として、当該年分の当該上場株式等に係る譲渡所得等の金額及び上場株式等に係る配当所得等の金額の計算上控除する。

 

租税特別措置法第8条の4(上場株式等に係る配当所得等の課税の特例)
第八条の四 居住者又は恒久的施設を有する非居住者が、平成二十八年一月一日以後に支払を受けるべき所得税法第二十三条第一項に規定する利子等(第三条第一項に規定する一般利子等、第三条の三第一項に規定する国外一般公社債等の利子等その他政令で定めるものを除く。以下この項及び第五項において「利子等」という。)又は同法第二十四条第一項に規定する配当等(第八条の二第一項に規定する私募公社債等運用投資信託等の収益の分配に係る配当等、前条第一項に規定する国外私募公社債等運用投資信託等の配当等その他政令で定めるものを除く。以下この項、第四項及び第五項において「配当等」という。)で次に掲げるもの(以下この項、次項及び第四項において「上場株式等の配当等」という。)を有する場合には、当該上場株式等の配当等に係る利子所得及び配当所得については、同法第二十二条及び第八十九条並びに第百六十五条の規定にかかわらず、他の所得と区分し、その年中の当該上場株式等の配当等に係る利子所得の金額及び配当所得の金額として政令で定めるところにより計算した金額(以下この項において「上場株式等に係る配当所得等の金額」という。)に対し、上場株式等に係る課税配当所得等の金額(上場株式等に係る配当所得等の金額(第三項第三号の規定により読み替えられた同法第七十二条から第八十七条までの規定の適用がある場合には、その適用後の金額)をいう。)の百分の十五に相当する金額に相当する所得税を課する。この場合において、当該上場株式等の配当等に係る配当所得については、同法第九十二条第一項の規定は、適用しない。

一 第三十七条の十一第二項第一号に掲げる株式等の利子等又は配当等で、内国法人から支払がされる当該配当等の支払に係る基準日(当該配当等が所得税法第二十五条第一項の規定により剰余金の配当、利益の配当、剰余金の分配又は金銭の分配とみなされるものに係る配当等である場合には、政令で定める日)においてその内国法人の発行済株式(投資法人(投資信託及び投資法人に関する法律第二条第十二項に規定する投資法人をいう。第三号、第九条の三第三号及び第九条の三の二第三項第三号において同じ。)にあつては、発行済みの投資口(投資信託及び投資法人に関する法律第二条第十四項に規定する投資口をいう。以下この項、次条第一項第四号、第九条の三第三号並びに第九条の三の二第一項第三号及び第三項第三号において同じ。)。第九条の三第一号において同じ。)又は出資の総数又は総額の百分の三以上に相当する数又は金額の株式(投資口を含む。以下この章において同じ。)又は出資を有する者が当該内国法人から支払を受ける配当等以外のもの
二 投資信託でその設定に係る受益権の募集が公募(金融商品取引法第二条第三項に規定する取得勧誘のうち同項第一号に掲げる場合に該当するものとして政令で定めるものをいう。)により行われたもの(特定株式投資信託を除く。)の収益の分配
三 特定投資法人(その規約に投資信託及び投資法人に関する法律第二条第十六項に規定する投資主の請求により投資口の払戻しをする旨が定められており、かつ、その設立の際の投資口の金融商品取引法第二条第三項に規定する有価証券の募集が同項に規定する取得勧誘であつて同項第一号に掲げる場合に該当するものとして政令で定めるものにより行われた投資法人をいう。)の投資口の配当等
四 特定受益証券発行信託(その信託法(平成十八年法律第百八号)第三条第一号に規定する信託契約(次条第一項第五号、第九条の三第四号、第九条の三の二第一項第四号及び第三十七条の十一第二項第三号の二において「信託契約」という。)の締結時において委託者が取得する受益権の募集が公募(金融商品取引法第二条第三項に規定する取得勧誘のうち同項第一号に掲げる場合に該当するものとして政令で定めるものをいう。)により行われたものに限る。)の収益の分配
五 特定目的信託(その信託契約の締結時において原委託者が有する社債的受益権の募集が第八条の二第一項第二号に規定する公募により行われたものに限る。)の社債的受益権の剰余金の配当
六 第三条第一項第一号に規定する特定公社債の利子