株式の譲渡取引⑳-株式の譲渡が短期保有の土地等の譲渡とされる場合を整理せずに実務を行っていないか?

Q 個人株主が株式を譲渡した時に、発行法人の総資産価額に占める土地等の価額の割合が、70%以上である場合の留意点を教えてくれますか?

A 短期保有の土地等を譲渡したものとして課税される場合があります(税率:所得税30.63%、住民税9%)。

解説
譲渡した株式が、次のいずれかに該当する場合には、短期保有の土地等を譲渡したものとして分離課税となります(税率:所得税30.63%、住民税9%)(租税特別措置法第32条第1項第2項)。

土地譲渡類似株式(次のいずれかに該当する株式)(租税特別措置法施行令第21条第3項)
1.発行法人の有する総資産価額に占める短期保有土地等の価額の合計額の割合が70%以上である株式
2.発行法人の有する総資産価額に占める土地等の価額の合計額の割合が70%以上である株式で、個人株主が譲渡した年の1月1日において、株式保有期間が5年以下である株式

事業譲渡類似株式(次の全てに該当する株式)(租税特別措置法施行令第21条第4項、第5項、第6項)
1.譲渡した年以前3年内のいずれかの時において、特殊関係株主等が発行済株式総数の30%以上であり、かつ、譲渡する株主が特殊関係株主等であること
2.譲渡した年において、その譲渡株式数が発行済株式総数の5%以上であり、かつ、譲渡した年以前3年内の譲渡株式数が、発行済株式総数の15%以上であること(上場株式等は除かれます)

 

租税特別措置法第32条第1項第2項
(短期譲渡所得の課税の特例)
第三十二条 個人が、その有する土地等又は建物等で、その年一月一日において第三十一条第二項に規定する所有期間が五年以下であるもの(その年中に取得をした土地等又は建物等で政令で定めるものを含む。)の譲渡をした場合には、当該譲渡による譲渡所得については、所得税法第二十二条及び第八十九条並びに第百六十五条の規定にかかわらず、他の所得と区分し、その年中の当該譲渡に係る譲渡所得の金額(同法第三十三条第三項に規定する譲渡所得の特別控除額の控除をしないで計算した金額とし、第三十一条第一項に規定する長期譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額があるときは、同項後段の規定にかかわらず、当該計算した金額を限度として当該損失の金額を控除した後の金額とする。以下この項において「短期譲渡所得の金額」という。)に対し、課税短期譲渡所得金額(短期譲渡所得の金額(第四項において準用する第三十一条第三項第三号の規定により読み替えられた同法第七十二条から第八十七条までの規定の適用がある場合には、その適用後の金額)をいう。)の百分の三十に相当する金額に相当する所得税を課する。この場合において、短期譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額があるときは、同法その他所得税に関する法令の規定の適用については、当該損失の金額は生じなかつたものとみなす。

2 前項の規定は、個人が、その有する資産が主として土地等である法人の発行する株式又は出資(当該株式又は出資のうち次に掲げる出資、投資口又は受益権に該当するものを除く。以下この項において「株式等」という。)の譲渡で、その年一月一日において前項に規定する所有期間が五年以下である土地等の譲渡に類するものとして政令で定めるものをした場合において、当該譲渡による所得が、事業又はその用に供する資産の譲渡に類するものとして政令で定める株式等の譲渡による所得に該当するときについて準用する。
一 資産の流動化に関する法律第二条第三項に規定する特定目的会社であつて第六十七条の十四第一項第一号ロ(1)若しくは(2)に掲げるもの又は同号ロ(3)若しくは(4)に掲げるもの(同項第二号ニに規定する同族会社に該当するものを除く。)に該当するものの同法第二条第五項に規定する優先出資及び同条第六項に規定する特定出資
二 投資信託及び投資法人に関する法律第二条第十二項に規定する投資法人であつて、第六十七条の十五第一項第一号ロ(1)又は(2)に掲げるもの(同項第二号ニに規定する同族会社に該当するものを除く。)に該当するものの同法第二条第十四項に規定する投資口
三 法人課税信託のうち特定目的信託であつて、第六十八条の三の二第一項第一号ロに掲げる要件に該当するもの(同項第二号イに規定する同族会社に該当するものを除く。)の受益権
四 法人課税信託のうち法人税法第二条第二十九号の二ニに掲げる投資信託であつて、第六十八条の三の三第一項第一号ロに掲げる要件に該当するもの(同項第二号イに規定する同族会社に該当するものを除く。)の受益権

 

租税特別措置法施行令第21条第3項、第4項、第5項、第6項

3 法第三十二条第二項に規定する政令で定める譲渡は、次に掲げる株式等(同項に規定する株式等をいう。以下この項及び次項において同じ。)の譲渡とする。
一 その有する資産の価額の総額のうちに占める短期保有土地等(当該法人がその取得をした日から引き続き所有していた法第三十二条第一項に規定する土地等(以下この項において「土地等」という。)でその取得をした日の翌日から当該株式等の譲渡をした日の属する年の一月一日までの所有期間が五年以下であるもの及び土地等で当該株式等の譲渡をした日の属する年において当該法人が取得をしたものをいう。)の価額の合計額の割合が百分の七十以上である法人の株式等
二 その有する資産の価額の総額のうちに占める土地等の価額の合計額の割合が百分の七十以上である法人の株式等のうち、次に掲げる株式等に該当するもの
イ その年一月一日において当該個人がその取得をした日の翌日から引き続き所有していた期間(第二十条第三項第二号又は第三号に規定する贈与、相続、遺贈又は譲渡により取得をした株式等については、同項第二号又は第三号に掲げる日の翌日から当該贈与、相続、遺贈又は譲渡があつた日までの期間を含む。)が五年以下である株式等
ロ その年中に取得をした株式等(第二十条第三項第三号に規定する贈与、相続、遺贈又は譲渡により取得をした株式等については、同号に規定する者がその取得をした日の翌日からその年一月一日までの期間が五年を超えるものを除く。)

4 法第三十二条第二項に規定する政令で定める株式等の譲渡は、次に掲げる要件に該当する場合のその年における第二号の株式等の譲渡とする。
一 その年以前三年内のいずれかの時において、その株式等に係る発行法人の特殊関係株主等がその発行法人の発行済株式(投資信託及び投資法人に関する法律第二条第十二項に規定する投資法人にあつては、発行済みの同条第十四項に規定する投資口。次項第三号において同じ。)又は出資(当該発行法人が有する自己の株式(同条第十四項に規定する投資口を含む。次項第三号において同じ。)又は出資を除く。次号において「発行済株式等」という。)の総数又は総額の百分の三十以上に相当する数又は金額の株式等を有し、かつ、その株式等の譲渡をした者がその特殊関係株主等であること。
二 その年において、その株式等の譲渡をした者を含む前号の発行法人の特殊関係株主等がその発行法人の発行済株式等の総数又は総額の百分の五以上に相当する数又は金額の株式等の譲渡をし、かつ、その年以前三年内において、その発行法人の発行済株式等の総数又は総額の百分の十五以上に相当する数又は金額の株式等の譲渡をしたこと。

5 前項第二号の場合において、同号の譲渡は、次に掲げる株式の譲渡を含まないものとする。
一 株式が金融商品取引法第二条第十六項に規定する金融商品取引所(以下この項において「金融商品取引所」という。)に上場されている場合において、同条第十七項に規定する取引所金融商品市場においてするその株式の譲渡
二 株式が店頭売買登録銘柄(株式で、金融商品取引法第二条第十三項に規定する認可金融商品取引業協会(以下この項において「認可金融商品取引業協会」という。)が、その定める規則に従い、その店頭売買につき、その売買価格を発表し、かつ、当該株式の発行法人に関する資料を公開するものとして登録をしたものをいう。第四号において同じ。)である場合において、同法第六十七条第二項に規定する店頭売買有価証券市場における同法第二条第九項に規定する金融商品取引業者(同法第二十八条第一項に規定する第一種金融商品取引業を行う者に限る。以下この項において「金融商品取引業者」という。)の媒介、取次ぎ又は代理によつてするその株式の譲渡(第四号に規定する登録に係る株式の譲渡に該当する場合における当該譲渡を除く。)
三 株式(その金融商品取引所にその発行する株式が上場されていない発行法人に係る当該株式に限る。)が金融商品取引法第百二十一条の規定により内閣総理大臣への届出がなされて最初に当該金融商品取引所に上場される場合において、当該金融商品取引所の定める当該上場に関する規則に従つて当該株式の当該上場の申請の日から当該上場される日までの間に株式の公開(同法第四条第一項の規定による内閣総理大臣への届出をし、かつ、認可金融商品取引業協会の定める規則に従つてその承認を受けた金融商品取引業者を通じてする同法第二条第四項に規定する有価証券の売出しに該当する株式の売出しをいう。)の方法により行う当該上場に係る株式の譲渡(当該株式に係る発行法人の特殊関係株主等がその発行法人の発行済株式(当該発行法人が有する自己の株式を除く。次号において同じ。)の総数の百分の十以上に相当する数の株式の譲渡をした場合における当該譲渡を除く。)
四 株式(金融商品取引所に上場されている株式以外の株式に限る。以下この号において同じ。)が最初に認可金融商品取引業協会の定める規則に従い店頭売買登録銘柄として登録された場合において、当該規則に従い当該登録に際し株式の売出し(金融商品取引法第四条第一項の規定による内閣総理大臣への届出をし、かつ、当該規則に従つて当該登録の申請をした金融商品取引業者を通じてする同法第二条第四項に規定する有価証券の売出しに該当する株式の売出しをいう。)の方法により行う当該登録に係る株式の譲渡(当該株式に係る発行法人の特殊関係株主等がその発行法人の発行済株式の総数の百分の十以上に相当する数の株式の譲渡をした場合における当該譲渡を除く。)

6 第四項並びに前項第三号及び第四号に規定する特殊関係株主等とは、これらの規定に規定する発行法人の所得税法第二条第一項第八号の二に規定する株主等並びに当該株主等と法人税法施行令第四条第一項及び第二項に規定する特殊の関係その他これに準ずる関係のある者をいう。