株式の譲渡取引㉑-株式を譲渡していないにも関わらず、譲渡所得税が課税される場合を整理せずに実務を行っていないか?

Q 株式を保有する居住者が国外転出する場合や、非居住者に贈与、相続又は遺贈した場合の留意点を教えてくれますか?

A 株式の譲渡をしていないにも関わらず、譲渡したものとみなして所得税が課税される場合があります。

解説
平成27年7月1日以後に国外転出をする居住者が、1億円以上の有価証券等を所有している場合には、所有する有価証券等について譲渡があったものとみなして、所得税が課税されます(所得税法第60条の2第1項)。
また、居住者の所有する1億円以上の有価証券等が、贈与、相続、又は遺贈により、非居住者に移転した場合には、所有する有価証券等について譲渡があったものとみなして、その居住者に所得税が課税されます(所得税法第60条の3第1項)。

所得税法第60条の2第1項(国外転出をする場合の譲渡所得等の特例)
第六十条の二 国外転出(国内に住所及び居所を有しないこととなることをいう。以下この条において同じ。)をする居住者が、その国外転出の時において有価証券又は第百七十四条第九号(内国法人に係る所得税の課税標準)に規定する匿名組合契約の出資の持分(株式を無償又は有利な価額により取得することができる権利を表示する有価証券で第百六十一条第一項(国内源泉所得)に規定する国内源泉所得を生ずべきものその他の政令で定める有価証券を除く。以下この条から第六十条の四まで(外国転出時課税の規定の適用を受けた場合の譲渡所得等の特例)において「有価証券等」という。)を有する場合には、その者の事業所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算については、その国外転出の時に、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額により、当該有価証券等の譲渡があつたものとみなす。
一 当該国外転出をする日の属する年分の確定申告書の提出の時までに国税通則法第百十七条第二項(納税管理人)の規定による納税管理人の届出をした場合、同項の規定による納税管理人の届出をしないで当該国外転出をした日以後に当該年分の確定申告書を提出する場合又は当該年分の所得税につき決定がされる場合 当該国外転出の時における当該有価証券等の価額に相当する金額
二 前号に掲げる場合以外の場合 当該国外転出の予定日から起算して三月前の日(同日後に取得をした有価証券等にあつては、当該取得時)における当該有価証券等の価額に相当する金額

 

所得税法第60条の3第1項(贈与等により非居住者に資産が移転した場合の譲渡所得等の特例)
第六十条の三 居住者の有する有価証券等が、贈与、相続又は遺贈(以下この条において「贈与等」という。)により非居住者に移転した場合には、その居住者の事業所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算については、別段の定めがあるものを除き、その贈与等の時に、その時における価額に相当する金額により、当該有価証券等の譲渡があつたものとみなす。