株式の譲渡取引㉗-株式の取得費を計算する際に、1株当たりの価額調整が必要となる場合を整理せずに実務を行っていないか?

Q 株式の取得費を計算する際に、1株当たりの価額調整が必要となる場合の規定について教えてくれますか?

A 株式分割及び株式併合、組織再編等により新たに株式を取得した場合に、価額調整が必要となります。

解説
株式の取得費は、取得に要した1株当たりの価額に株数等を乗じて計算しますが、その1株当たりの価額が調整される場合があります。
その主なものは次のことが生じた場合又はそれによる株式の取得があった場合です。

(1) 株式の分割又は併合が行われた場合(所得税法第110条第1項)
(2) 同一種類の株式を株主割当てにより取得した場合(所得税法第111条第1項第2項)
(3) 課税の繰延べの対象となる合併により合併法人の株式等を取得した場合(所得税法第112条第1項第2項)
(4) 課税の繰延べの対象となる分割型分割により分割承継法人の株式を取得した場合(所得税法第113条第1項第2項3項)
(5) 株式分配により完全子法人の株式を取得した場合(所得税法第113条の2第1項第2項第3項)
(6) 資本の払戻し又は残余財産の分配を受けた株式を取得した場合(所得税法第114条第1項)
(7) 組織変更により組織変更法人の株式を取得した場合(所得税法第115条)

 
所得税法第110条第1項(株式の分割又は併合の場合の株式等の取得価額)

第百十条 居住者の有する株式について、その株式(以下この項において「旧株」という。)の分割又は併合があつた場合には、その分割又は併合があつた日の属する年以後の各年における第百五条第一項(有価証券の評価の方法)の規定による分割又は併合後の所有株式(旧株を発行した法人の株式で、当該分割又は併合の直後に当該居住者が有するものをいう。以下この項において同じ。)の評価額の計算については、その計算の基礎となる分割又は併合後の所有株式の一株(出資及び投資口については、一口。以下この目において同じ。)当たりの取得価額は、旧株一株の従前の取得価額に旧株の数を乗じてこれを分割又は併合後の所有株式の数で除して計算した金額とし、かつ、その分割又は併合後の所有株式のうちに旧株が含まれているときは、その旧株は、同日において取得されたものとみなす。

 
所得税法第111条第1項第2項(株主割当てにより取得した株式の取得価額)

第百十一条 居住者が、その有する株式(以下この項において「旧株」という。)について、その旧株の数に応じて割り当てられた株式を取得した場合(その取得した株式(以下この項において「新株」という。)について、金銭の払込みを要する場合に限る。)には、その払込みの期日(払込みの期間の定めがある場合には、当該払込みをした日)の属する年以後の各年における第百五条第一項(有価証券の評価の方法)の規定によるこれらの株式の評価額の計算については、その計算の基礎となる旧株及び新株の一株当たりの取得価額は、旧株一株の従前の取得価額と新株一株について払い込んだ金銭の額(その金銭の払込みによる取得のために要した費用がある場合には、その費用の額を加算した金額)に旧株一株について取得した新株の数を乗じて計算した金額との合計額を、旧株一株について取得した新株の数に一を加えた数で除して計算した金額とし、かつ、その旧株は、同日において取得されたものとみなす。

2 居住者が、その有する株式(以下この項において「旧株」という。)について、その旧株の数に応じてその旧株を発行した法人の株式無償割当て(法人がその法人の株主等に対して新たに払込みをさせないで自己の株式の割当てをすることをいう。以下この項において同じ。)により割り当てられた株式を取得した場合(当該旧株と同一の種類の株式を取得した場合に限る。)には、その株式無償割当てがあつた日の属する年以後の各年における第百五条第一項の規定による株式無償割当て後の所有株式(旧株を発行した法人の株式で、当該株式無償割当ての直後に当該居住者が有するものをいう。以下この項において同じ。)の評価額の計算については、その計算の基礎となる株式無償割当て後の所有株式の一株当たりの取得価額は、旧株一株の従前の取得価額に旧株の数を乗じてこれを株式無償割当て後の所有株式の数で除して計算した金額とし、かつ、その株式無償割当て後の所有株式のうちに旧株が含まれているときは、その旧株は、同日において取得されたものとみなす。

 
所得税法第112条第1項第2項(合併により取得した株式等の取得価額)

第百十二条 居住者が、その有する株式(以下この項において「旧株」という。)について、その旧株を発行した法人の合併(法人課税信託に係る信託の併合を含むものとし、当該合併に係る第六十一条第六項第五号(所有株式に対応する資本金等の額又は連結個別資本金等の額の計算方法等)に規定する被合併法人(次項において「被合併法人」という。)の株主等に当該合併に係る同条第六項第十号に規定する合併法人(以下この項及び次項において「合併法人」という。)又は合併法人との間に当該合併法人の発行済株式若しくは出資(自己が有する自己の株式を除く。次条第一項及び第四項並びに第百十三条の二第三項(株式分配により取得した株式等の取得価額)において「発行済株式等」という。)の全部を直接若しくは間接に保有する関係として財務省令で定める関係がある法人(以下この項において「合併親法人」という。)のうちいずれか一の法人の株式以外の資産(当該株主等に対する株式に係る剰余金の配当、利益の配当又は剰余金の分配として交付がされた金銭その他の資産及び合併に反対する当該株主等に対するその買取請求に基づく対価として交付がされる金銭その他の資産を除く。)が交付されなかつたものに限る。)により合併法人からその合併法人の株式又は合併親法人の株式を取得した場合には、その合併のあつた日の属する年以後の各年における第百五条第一項(有価証券の評価の方法)の規定による合併法人の株式又は合併親法人の株式の評価額の計算については、その計算の基礎となるその取得した合併法人の株式(以下この項において「合併法人株式」という。)又は合併親法人の株式(以下この項において「合併親法人株式」という。)の一株当たりの取得価額は、旧株一株の従前の取得価額(法第二十五条第一項第一号(合併の場合のみなし配当)の規定により剰余金の配当、利益の配当、剰余金の分配若しくは金銭の分配として交付を受けたものとみなされる金額又はその合併法人株式若しくは合併親法人株式の取得のために要した費用の額がある場合には、当該交付を受けたものとみなされる金額及び費用の額のうち旧株一株に対応する部分の金額を加算した金額)を旧株一株について取得した合併法人株式又は合併親法人株式の数で除して計算した金額とする。

2 居住者の有する株式(以下この項において「所有株式」という。)について、その所有株式を発行した法人を合併法人とする合併(法人課税信託に係る信託の併合を含むものとし、法人税法施行令第四条の三第二項第一号(適格組織再編成における株式の保有関係等)に規定する無対価合併に該当するもので同項第二号ロに掲げる関係があるものに限る。以下この項において「無対価合併」という。)が行われた場合には、その無対価合併のあつた日の属する年以後の各年における第百五条第一項の規定による所有株式の評価額の計算については、その計算の基礎となる所有株式一株当たりの取得価額は、所有株式一株の従前の取得価額に、旧株(当該無対価合併に係る被合併法人の株式でその居住者が当該無対価合併の直前に有していたものをいう。以下この項において同じ。)一株の従前の取得価額(法第二十五条第一項第一号の規定により剰余金の配当、利益の配当又は剰余金の分配として交付を受けたものとみなされる金額がある場合には、当該交付を受けたものとみなされる金額のうち旧株一株に対応する部分の金額を加算した金額)にその旧株の数を乗じてこれをその所有株式の数で除して計算した金額を加算した金額とし、かつ、その所有株式は、同日において取得されたものとみなす。

 
所得税法第113条第1項第2項3項(分割型分割により取得した株式等の取得価額)

第百十三条 居住者が、その有する株式(以下この項において「所有株式」という。)について、その所有株式を発行した法人の法第二十四条第一項(配当所得)に規定する分割型分割(法人税法第二条第十二号の九イ(定義)に規定する分割対価資産として当該分割型分割に係る第六十一条第六項第三号(所有株式に対応する資本金等の額又は連結個別資本金等の額の計算方法等)に規定する分割承継法人(以下第四項までにおいて「分割承継法人」という。)又は分割承継法人との間に当該分割承継法人の発行済株式等の全部を直接若しくは間接に保有する関係として財務省令で定める関係がある法人(以下第四項までにおいて「分割承継親法人」という。)のうちいずれか一の法人の株式以外の資産が交付されなかつたものに限る。以下この項において同じ。)によりその分割承継法人の株式又は分割承継親法人の株式を取得した場合には、その分割型分割のあつた日の属する年以後の各年における第百五条第一項(有価証券の評価の方法)の規定による分割承継法人の株式又は分割承継親法人の株式の評価額の計算については、その計算の基礎となるその取得した分割承継法人の株式(以下この項において「分割承継法人株式」という。)又は分割承継親法人の株式(以下この項において「分割承継親法人株式」という。)の一株当たりの取得価額は、所有株式一株の従前の取得価額に当該分割型分割に係る第六十一条第二項第二号に規定する割合を乗じて計算した金額を所有株式一株について取得した分割承継法人株式又は分割承継親法人株式の数で除して計算した金額(法第二十五条第一項第二号(分割型分割の場合のみなし配当)の規定により剰余金の配当若しくは利益の配当として交付を受けたものとみなされる金額又はその分割承継法人株式若しくは分割承継親法人株式の取得のために要した費用の額がある場合には、当該交付を受けたものとみなされる金額及び費用の額のうち分割承継法人株式又は分割承継親法人株式一株に対応する部分の金額を加算した金額)とする。

2 居住者の有する株式(以下この項において「所有株式」という。)について、その所有株式を発行した法人を分割承継法人とする法第二十四条第一項に規定する分割型分割(法人税法施行令第四条の三第六項第一号イ(適格組織再編成における株式の保有関係等)に規定する無対価分割に該当するもので同項第二号イ(2)に掲げる関係があるものに限る。以下この項及び次項において「無対価分割型分割」という。)が行われた場合には、その無対価分割型分割のあつた日の属する年以後の各年における第百五条第一項の規定による所有株式の評価額の計算については、その計算の基礎となる所有株式一株当たりの取得価額は、所有株式一株の従前の取得価額に、旧株(当該無対価分割型分割に係る第六十一条第六項第六号に規定する分割法人(次項及び第四項において「分割法人」という。)の株式でその居住者が当該無対価分割型分割の直前に有していたものをいう。以下この項において同じ。)一株の従前の取得価額に当該無対価分割型分割に係る第六十一条第二項第二号に規定する割合を乗じて計算した金額にその旧株の数を乗じてこれをその所有株式の数で除して計算した金額(法第二十五条第一項第二号の規定により剰余金の配当又は利益の配当として交付を受けたものとみなされる金額がある場合には、当該交付を受けたものとみなされる金額のうち所有株式一株に対応する部分の金額を加算した金額)を加算した金額とし、かつ、その所有株式は、同日において取得されたものとみなす。

3 居住者の有する株式(以下この項において「所有株式」という。)を発行した法人の法第二十四条第一項に規定する分割型分割によりその居住者が分割承継法人の株式、分割承継親法人の株式その他の資産の交付を受けた場合又は所有株式を発行した法人を分割法人とする無対価分割型分割が行われた場合には、その分割型分割又は無対価分割型分割のあつた日の属する年以後の各年における第百五条第一項の規定による所有株式の評価額の計算については、その計算の基礎となる所有株式一株当たりの取得価額は、所有株式一株の従前の取得価額から所有株式一株の従前の取得価額に当該分割型分割又は無対価分割型分割に係る第六十一条第二項第二号に規定する割合を乗じて計算した金額を控除した金額とし、かつ、その所有株式は、同日において取得されたものとみなす。

 
所得税法第113条の2第1項第2項第3項(株式分配により取得した株式等の取得価額)

第百十三条の二 居住者が、その有する株式(以下この項において「所有株式」という。)について、その所有株式を発行した法人の行つた法第二十四条第一項(配当所得)に規定する株式分配(法人税法第二条第十二号の十五の二(定義)に規定する完全子法人(以下第三項までにおいて「完全子法人」という。)の株式以外の資産が交付されなかつたものに限る。以下この項において同じ。)によりその完全子法人の株式を取得した場合には、その株式分配のあつた日の属する年以後の各年における第百五条第一項(有価証券の評価の方法)の規定による完全子法人の株式の評価額の計算については、その計算の基礎となるその取得した完全子法人の株式(以下この項において「完全子法人株式」という。)の一株当たりの取得価額は、所有株式一株の従前の取得価額に当該株式分配に係る第六十一条第二項第三号(所有株式に対応する資本金等の額又は連結個別資本金等の額の計算方法等)に規定する割合を乗じて計算した金額を所有株式一株について取得した完全子法人株式の数で除して計算した金額(法第二十五条第一項第三号(株式分配の場合のみなし配当)の規定により剰余金の配当若しくは利益の配当として交付を受けたものとみなされる金額又はその完全子法人株式の取得のために要した費用の額がある場合には、当該交付を受けたものとみなされる金額及び費用の額のうち完全子法人株式一株に対応する部分の金額を加算した金額)とする。

2 居住者の有する株式(以下この項において「所有株式」という。)を発行した法人の行つた法第二十四条第一項に規定する株式分配によりその居住者が完全子法人の株式その他の資産の交付を受けた場合には、その株式分配のあつた日の属する年以後の各年における第百五条第一項の規定による所有株式の評価額の計算については、その計算の基礎となる所有株式一株当たりの取得価額は、所有株式一株の従前の取得価額から所有株式一株の従前の取得価額に当該株式分配に係る第六十一条第二項第三号に規定する割合を乗じて計算した金額を控除した金額とし、かつ、その所有株式は、同日において取得されたものとみなす。

3 第一項に規定する株式分配に係る完全子法人の株式が当該株式分配に係る第六十一条第六項第九号に規定する現物分配法人の発行済株式等の総数又は総額のうちに占める当該現物分配法人の各株主等の有する当該現物分配法人の株式の数又は金額の割合に応じて交付されない場合には、当該株式分配は、第一項に規定する株式分配に該当しないものとする。

 
所得税法第114条第1項(資本の払戻し等があつた場合の株式等の取得価額)
第百十四条 居住者が、その有する株式(以下この項において「旧株」という。)を発行した法人の資本の払戻し(法第二十五条第一項第四号(配当等とみなす金額)に規定する資本の払戻しをいう。)又は解散による残余財産の分配(以下この項において「払戻し等」という。)として金銭その他の資産を取得した場合には、その払戻し等のあつた日の属する年以後の各年における第百五条第一項(有価証券の評価の方法)の規定による旧株の評価額の計算については、その計算の基礎となる旧株一株当たりの取得価額は、旧株一株の従前の取得価額から旧株一株の従前の取得価額に当該払戻し等に係る第六十一条第二項第四号(所有株式に対応する資本金等の額又は連結個別資本金等の額の計算方法等)に規定する割合(当該払戻し等が法第二十四条第一項(配当所得)に規定する出資等減少分配である場合には、当該出資等減少分配に係る第六十一条第二項第五号に規定する割合。第五項において「払戻し等割合」という。)を乗じて計算した金額を控除した金額とし、かつ、その旧株は、同日において取得されたものとみなす。

 
所得税法第115条(組織変更があつた場合の株式等の取得価額)
第百十五条 居住者が、その有する株式(以下この条において「旧株」という。)を発行した法人の組織変更(当該組織変更をした法人(以下この条において「組織変更法人」という。)の株主等に当該組織変更法人の株式のみが交付されたものに限る。)により組織変更法人の株式(以下この条において「新株」という。)を取得した場合には、その組織変更のあつた日の属する年以後の各年における第百五条第一項(有価証券の評価の方法)の規定による新株の評価額の計算については、その計算の基礎となるその取得した新株一単位当たりの取得価額は、旧株一単位の従前の取得価額(その新株の取得のために要した費用の額がある場合には、当該費用の額のうち旧株一単位に対応する部分の金額を加算した金額)に旧株の数を乗じてこれを取得した新株の数で除して計算した金額とする。