株式の譲渡取引㉙-種類株式の権利行使等により株式等を譲渡した場合の譲渡所得等の特例を整理せずに実務を行っていないか?

Q 種類株式の権利行使等により株式等を譲渡した場合の譲渡所得等の特例について教えてくれますか?

A 旧株等の譲渡をし、一定の新株等の交付を受けた場合には、旧株等の譲渡がなかったものとみなされます。

解説
居住者が、その有する株式等について、種類株式等の行使(以下(1)〜(6))により譲渡をし、かつ、一定の法人株式のみが交付される場合には、その株式等の譲渡はなかったものとみなされます(所得税法第57条の4第3項、所得税法施行令第167条の7第7項、所得税基本通達57の4−2)。

(1) 取得請求権付株式
 取得請求権付株式に係る請求権の行使により、その取得の対価としてその取得をする法人の株式のみが交付される場合のその請求権の行使

(2) 取得条項付株式
 取得条項付株式に係る取得事由の発生により、その取得の対価としてその取得をされる株主等にその取得をする法人の株式のみが交付される場合(その取得の対象となった種類の株式の全てが取得をされる場合には、その取得の対価としてその取得をされる株主等にその取得をする法人の株式及び新株予約権のみが交付される場合を含みます。)のその取得事由の発生

(3) 全部取得条項付種類株式
 全部取得条項付種類株式に係る取得決議により、その取得の対価としてその取得をされる株主等にその取得をする法人の株式(その株式と併せて交付されるその取得をする法人の新株予約権を含みます。)以外の資産(その取得の価格の決定の申立てに基づいて交付される金銭その他の資産を除きます。)が交付されない場合のその取得決議

(4) 新株予約権付社債についての社債
 新株予約権付社債に付された新株予約権の行使により、その取得の対価としてその取得をする法人の株式が交付される場合のその新株予約権の行使

(5) 取得条項付新株予約権
 取得条項付新株予約権に係る取得事由の発生により、その取得の対価としてその取得をされる新株予約権者にその取得をする法人の株式のみが交付される場合のその取得事由の発生

(6) 取得条項付新株予約権が付された新株予約権付社債
 取得条項付新株予約権に係る取得事由の発生により、その取得の対価としてその取得をされる新株予約権者にその取得をする法人の株式のみが交付される場合のその取得事由の発生

交付される株式に一株に満たない端数が生じたため、その端数に相当する金銭が株主に交付されたときもこの特例の適用がありますが、その交付された金銭については、その一株に満たない端数の株式の譲渡があったものとして課税関係が生じる点には留意が必要です。

 
所得税法第57条の4第3項(株式交換等に係る譲渡所得等の特例)

3 居住者が、各年において、その有する次の各号に掲げる有価証券を当該各号に定める事由により譲渡をし、かつ、当該事由により当該各号に規定する取得をする法人の株式(出資を含む。以下この項において同じ。)又は新株予約権の交付を受けた場合(当該交付を受けた株式又は新株予約権の価額が当該譲渡をした有価証券の価額とおおむね同額となつていないと認められる場合を除く。)には、第二十七条、第三十三条又は第三十五条の規定の適用については、当該有価証券の譲渡がなかつたものとみなす。
一 取得請求権付株式(法人がその発行する全部又は一部の株式の内容として株主等が当該法人に対して当該株式の取得を請求することができる旨の定めを設けている場合の当該株式をいう。) 当該取得請求権付株式に係る請求権の行使によりその取得の対価として当該取得をする法人の株式のみが交付される場合の当該請求権の行使
二 取得条項付株式(法人がその発行する全部又は一部の株式の内容として当該法人が一定の事由(以下この号において「取得事由」という。)が発生したことを条件として当該株式の取得をすることができる旨の定めを設けている場合の当該株式をいう。) 当該取得条項付株式に係る取得事由の発生によりその取得の対価として当該取得をされる株主等に当該取得をする法人の株式のみが交付される場合(その取得の対象となつた種類の株式の全てが取得をされる場合には、その取得の対価として当該取得をされる株主等に当該取得をする法人の株式及び新株予約権のみが交付される場合を含む。)の当該取得事由の発生
三 全部取得条項付種類株式(ある種類の株式について、これを発行した法人が株主総会その他これに類するものの決議(以下この号において「取得決議」という。)によつてその全部の取得をする旨の定めがある場合の当該種類の株式をいう。) 当該全部取得条項付種類株式に係る取得決議によりその取得の対価として当該取得をされる株主等に当該取得をする法人の株式(当該株式と併せて交付される当該取得をする法人の新株予約権を含む。)以外の資産(当該取得の価格の決定の申立てに基づいて交付される金銭その他の資産を除く。)が交付されない場合の当該取得決議
四 新株予約権付社債についての社債 当該新株予約権付社債に付された新株予約権の行使によりその取得の対価として当該取得をする法人の株式が交付される場合の当該新株予約権の行使
五 取得条項付新株予約権(新株予約権について、これを発行した法人が一定の事由(以下この号において「取得事由」という。)が発生したことを条件としてこれを取得することができる旨の定めがある場合の当該新株予約権をいい、当該新株予約権を引き受ける者に特に有利な条件又は金額で交付された当該新株予約権その他の政令で定めるものを除く。) 当該取得条項付新株予約権に係る取得事由の発生によりその取得の対価として当該取得をされる新株予約権者に当該取得をする法人の株式のみが交付される場合の当該取得事由の発生
六 取得条項付新株予約権(新株予約権について、これを発行した法人が一定の事由(以下この号において「取得事由」という。)が発生したことを条件としてこれを取得することができる旨の定めがある場合の当該新株予約権をいう。)が付された新株予約権付社債 当該取得条項付新株予約権に係る取得事由の発生によりその取得の対価として当該取得をされる新株予約権者に当該取得をする法人の株式のみが交付される場合の当該取得事由の発生

 
所得税法施行令第167条の7第7項(株式交換等による取得株式等の取得価額の計算等)

7 法第五十七条の四第三項の規定の適用を受けた居住者が同項各号に規定する事由により取得をした当該各号に定める株式(出資及び投資信託及び投資法人に関する法律第二条第十四項(定義)に規定する投資口を含む。以下この条において同じ。)又は新株予約権に係る事業所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算については、次の各号に掲げる当該取得をした株式又は新株予約権の区分に応じ当該各号に定める金額を当該取得をした株式又は新株予約権の取得価額とする。
一 法第五十七条の四第三項第一号に規定する取得請求権付株式に係る同号に定める請求権の行使による当該取得請求権付株式の取得の対価として交付を受けた当該取得をする法人の株式(同項の規定の適用を受ける場合の当該取得をする法人の株式に限る。) 当該取得請求権付株式の取得価額(当該取得をする株式の取得に要した費用がある場合には、当該費用の額を加算した金額)
二 法第五十七条の四第三項第二号に規定する取得条項付株式に係る同号に定める取得事由の発生(その取得の対価として当該取得をされる同号の株主等に当該取得をする法人の株式のみが交付されたものに限る。)による当該取得条項付株式の取得の対価として交付を受けた当該取得をする法人の株式(同項の規定の適用を受ける場合の当該取得をする法人の株式に限る。) 当該取得条項付株式の取得価額(当該取得をする株式の取得に要した費用がある場合には、当該費用の額を加算した金額)
三 法第五十七条の四第三項第二号に規定する取得条項付株式に係る同号に定める取得事由の発生(その取得の対象となつた種類の株式の全てが取得され、かつ、その取得の対価として当該取得をされる同号の株主等に当該取得をする法人の株式及び新株予約権のみが交付されたものに限る。)による当該取得条項付株式の取得の対価として交付を受けた当該取得をする法人の次に掲げる株式及び新株予約権(同項の規定の適用を受ける場合の当該取得をする法人の当該株式及び新株予約権に限る。) 当該株式及び新株予約権の区分に応じそれぞれに定める金額
イ 当該取得をする法人の株式 当該取得条項付株式の取得価額(当該取得をする株式の取得に要した費用がある場合には、当該費用の額を加算した金額)
ロ 当該取得をする法人の新株予約権 零
四 法第五十七条の四第三項第三号に規定する全部取得条項付種類株式に係る同号に定める取得決議(その取得の対価として当該取得をされる同号の株主等に当該取得をする法人の株式以外の資産(当該取得の価格の決定の申立てに基づいて交付される金銭その他の資産を除く。)が交付されなかつたものに限る。)による当該全部取得条項付種類株式の取得の対価として交付を受けた当該取得をする法人の株式(同項の規定の適用を受ける場合の当該取得をする法人の株式に限る。) 当該全部取得条項付種類株式の取得価額(当該取得をする株式の取得に要した費用がある場合には、当該費用の額を加算した金額)
五 法第五十七条の四第三項第三号に規定する全部取得条項付種類株式に係る同号に定める取得決議(その取得の対価として当該取得をされる同号の株主等に当該取得をする法人の株式及び新株予約権が交付され、かつ、これら以外の資産(当該取得の価格の決定の申立てに基づいて交付される金銭その他の資産を除く。)が交付されなかつたものに限る。)による当該全部取得条項付種類株式の取得の対価として交付を受けた当該取得をする法人の次に掲げる株式及び新株予約権(同項の規定の適用を受ける場合の当該取得をする法人の当該株式及び新株予約権に限る。) 当該株式及び新株予約権の区分に応じそれぞれに定める金額
イ 当該取得をする法人の株式 当該全部取得条項付種類株式の取得価額(当該取得をする株式の取得に要した費用がある場合には、当該費用の額を加算した金額)
ロ 当該取得をする法人の新株予約権 零
六 法第五十七条の四第三項第四号に規定する新株予約権付社債についての社債に係る同号に定める新株予約権の行使による当該社債の取得の対価として交付を受けた当該取得をする法人の株式(同項の規定の適用を受ける場合の当該取得をする法人の株式に限る。) 当該新株予約権付社債の取得価額(当該取得をする株式の取得に要した費用がある場合には、当該費用の額を加算した金額)
七 法第五十七条の四第三項第五号に規定する取得条項付新株予約権に係る同号に定める取得事由の発生による当該取得条項付新株予約権の取得の対価として交付を受けた当該取得をする法人の株式(同項の規定の適用を受ける場合の当該取得をする法人の株式に限る。) 当該取得条項付新株予約権の取得価額(当該取得をする株式の取得に要した費用がある場合には、当該費用の額を加算した金額)
八 法第五十七条の四第三項第六号に規定する取得条項付新株予約権が付された新株予約権付社債に係る同号に定める取得事由の発生による当該新株予約権付社債の取得の対価として交付を受けた当該取得をする法人の株式(同項の規定の適用を受ける場合の当該取得をする法人の株式に限る。) 当該新株予約権付社債の取得価額(当該取得をする株式の取得に要した費用がある場合には、当該費用の額を加算した金額)

 
所得税基本通達57の4−2(一に満たない数の株式又は新株予約権の譲渡等による代金が交付された場合の取扱い)

57の4-2 法第57条の4第3項(同項第1号及び第4号を除く。以下この項において同じ。)の規定を適用する場合において、株式、新株予約権又は新株予約権付社債の発行会社が、同項に規定する事由により株主又は新株予約権者(以下この項において「株主等」という。)に対し交付しなければならない株式又は新株予約権(以下この項において「株式等」という。)に一に満たない端数が生じたため、会社法第234条第1項の規定等によりその端数の合計数に相当する株式等を譲渡し、又は買い取った代金として株主等に金銭が交付されたときは、その一に満たない端数に相当する株式等の株主等に対して当該発行会社の株式等が交付されたものとして取り扱う。
 なお、この場合において、その株主等に交付された一に満たない端数の株式等については令第167条の7の規定による取得価額の計算が行われ、その上で譲渡があったものとして措置法第37条の10、第37条の11、第37条の12又は第37条の12の2の規定が適用されることに留意する。
 ただし、その交付された金銭が、その取得の状況その他の事由を総合的に勘案して実質的に株主等に対して支払う法第57条の4第3項第2号に規定する取得条項付株式、同項第3号に規定する全部取得条項付種類株式、同項第5号に規定する取得条項付新株予約権又は同項第6号に規定する取得条項付新株予約権が付された新株予約権付社債の取得の対価であると認められるときは、当該取得の対価として金銭が交付されたものとして取り扱う。(平18課資3-12、課個2-20、課審6-12追加、平19課資3-5、課個2-15、課審6-9、平20課資3-4、課個2-33、課審6-18、平21課資3-5、課個2-14、課審6-12、平26課資3-8、課個2-15、課審7-15、平27課資3-4、課個2-19、課法10-5、課審7-13、平30課資3-2、課個2-25、課法10-3、課審7-6改正)

(注) 法第57条の4第3項第1号に規定する取得請求権付株式に係る請求権の行使又は同項第4号に規定する新株予約権付社債に付された新株予約権の行使により、株式等の発行会社が、株主等に交付する株式の数に一株に満たない端数がある場合において、会社法第167条第3項又は第283条に規定する一株に満たない端数に相当する部分は、令第167条の7第8項の規定により法第57条の4第3項第1号又は第4号に規定する取得をする法人の株式に含まれることに留意する。
 なお、この場合において、その株主等に交付された一株に満たない端数の株式については令第167条の7の規定による取得価額の計算が行われ、その上で譲渡があったものとして措置法第37条の10、第37条の11、第37条の12又は第37条の12の2の規定が適用されることに留意する。