非上場株式の評価㉝-遺産が未分割の場合の株主区分における議決権割合の判定を法定相続分で考えていないか?

Q 相続発生後、相続人間で遺産分割協議が成立していません。遺産が未分割の場合の非上場株式の評価について、留意事項はありますか?

A 同族株主等の株主区分判定で、各相続人が未分割の株式数の全部を取得したものとして、議決権割合を計算します。

解説
未分割財産については、民法の規定による相続分により取得したものとして課税価格を計算するものとされています(相続税法第55条)。
しかし、非上場株式の評価における同族株主等の株主区分判定では、各相続人が未分割の株式数の全部を取得したものとして、議決権割合を計算します。
各相続人の議決権割合が、遺産分割後の最大値となることを想定して株主区分を判定しておくことで、分割前は「同族株主等以外」に該当していた者が、分割後に「同族株主等」に該当し、課税価格が増加するケースを予め防止しています。

遺産分割の結果により、「同族株主等」に該当していた者が「同族株主等以外」に該当した場合には、納税者が更正の請求書を税務署に提出することにより、当初申告時に納め過ぎた相続税の還付請求手続きを行います。

 

相続税法第55条(未分割遺産に対する課税)
第五十五条 相続若しくは包括遺贈により取得した財産に係る相続税について申告書を提出する場合又は当該財産に係る相続税について更正若しくは決定をする場合において、当該相続又は包括遺贈により取得した財産の全部又は一部が共同相続人又は包括受遺者によつてまだ分割されていないときは、その分割されていない財産については、各共同相続人又は包括受遺者が民法(第九百四条の二(寄与分)を除く。)の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従つて当該財産を取得したものとしてその課税価格を計算するものとする。ただし、その後において当該財産の分割があり、当該共同相続人又は包括受遺者が当該分割により取得した財産に係る課税価格が当該相続分又は包括遺贈の割合に従つて計算された課税価格と異なることとなつた場合においては、当該分割により取得した財産に係る課税価格を基礎として、納税義務者において申告書を提出し、若しくは第三十二条第一項に規定する更正の請求をし、又は税務署長において更正若しくは決定をすることを妨げない。

 

国税庁HP 質疑応答事例 遺産が未分割である場合の議決権割合の判定
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hyoka/05/04.htm