非上場株式の評価㊻-評価会社が支払った弔慰金の負債計上について見逃している点はないか?

Q 純資産価額方式の計算上、被相続人の死亡に伴い評価会社が相続人に対して支払った弔慰金は負債として計上できますか?

A 原則として負債に計上できません。ただし、退職手当金等に該当し、相続税の課税価格に算入されることとなる金額に限り、負債に計上できます。

解説
被相続人の死亡によって受ける弔慰金や花輪代、葬祭料などは、通常相続税の対象になりません(相続税法基本通達3−18、3−19、3−20)ので、評価会社においても負債に計上しません。

ただし、被相続人の死亡に伴い評価会社が相続人に対して支払った弔慰金のうち、退職手当金等に該当するものとして相続税の課税価格に算入される金額に限り、負債に計上します(相続税法第3条第1項第2号、財産評価基本通達186(3))。

 

相続税法基本通達通達3−18(退職手当金等の取扱い)

3-18 法第3条第1項第2号に規定する「被相続人に支給されるべきであった退職手当金、功労金その他これらに準ずる給与」(以下「退職手当金等」という。)とは、その名義のいかんにかかわらず実質上被相続人の退職手当金等として支給される金品をいうものとする。(昭46直審(資)6改正)

 

相続税法基本通達3−19(退職手当金等の判定)

3-19 被相続人の死亡により相続人その他の者が受ける金品が退職手当金等に該当するかどうかは、当該金品が退職給与規程その他これに準ずるものの定めに基づいて受ける場合においてはこれにより、その他の場合においては当該被相続人の地位、功労等を考慮し、当該被相続人の雇用主等が営む事業と類似する事業における当該被相続人と同様な地位にある者が受け、又は受けると認められる額等を勘案して判定するものとする。

 

相続税法基本通達3−20(弔慰金等の取扱い)

3-20 被相続人の死亡により相続人その他の者が受ける弔慰金、花輪代、葬祭料等(以下「弔慰金等」という。)については、3-18及び3-19に該当すると認められるものを除き、次に掲げる金額を弔慰金等に相当する金額として取り扱い、当該金額を超える部分の金額があるときは、その超える部分に相当する金額は退職手当金等に該当するものとして取り扱うものとする。(昭57直資2-177改正)

(1) 被相続人の死亡が業務上の死亡であるときは、その雇用主等から受ける弔慰金等のうち、当該被相続人の死亡当時における賞与以外の普通給与(俸給、給料、賃金、扶養手当、勤務地手当、特殊勤務地手当等の合計額をいう。以下同じ。)の3年分(遺族の受ける弔慰金等の合計額のうち3-23に掲げるものからなる部分の金額が3年分を超えるときはその金額)に相当する金額

(2) 被相続人の死亡が業務上の死亡でないときは、その雇用主等から受ける弔慰金等のうち、当該被相続人の死亡当時における賞与以外の普通給与の半年分(遺族の受ける弔慰金等の合計額のうち3-23に掲げるものからなる部分の金額が半年分を超えるときはその金額)に相当する金額

 

相続税法第3条第1項第2号(相続又は遺贈により取得したものとみなす場合)

第三条 次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該各号に掲げる者が、当該各号に掲げる財産を相続又は遺贈により取得したものとみなす。この場合において、その者が相続人(相続を放棄した者及び相続権を失つた者を含まない。第十五条、第十六条、第十九条の二第一項、第十九条の三第一項、第十九条の四第一項及び第六十三条の場合並びに「第十五条第二項に規定する相続人の数」という場合を除き、以下同じ。)であるときは当該財産を相続により取得したものとみなし、その者が相続人以外の者であるときは当該財産を遺贈により取得したものとみなす。

二 被相続人の死亡により相続人その他の者が当該被相続人に支給されるべきであつた退職手当金、功労金その他これらに準ずる給与(政令で定める給付を含む。)で被相続人の死亡後三年以内に支給が確定したものの支給を受けた場合においては、当該給与の支給を受けた者について、当該給与

 

財産評価基本通達186(3)(純資産価額計算上の負債)
186 前項の課税時期における1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)の計算を行う場合には、貸倒引当金、退職給与引当金、納税引当金その他の引当金及び準備金に相当する金額は負債に含まれないものとし、次に掲げる金額は負債に含まれることに留意する(次項及び186-3≪評価会社が有する株式等の純資産価額の計算≫において同じ。)。(昭47直資3-16・昭58直評5外・平2直評12外・平11課評2-2外・平12課評2-4外・平18課評2-27外・令3課評2-43外改正)

(1) 課税時期の属する事業年度に係る法人税額、消費税額、事業税額、道府県民税額及び市町村民税額のうち、その事業年度開始の日から課税時期までの期間に対応する金額(課税時期において未払いのものに限る。)

(2) 課税時期以前に賦課期日のあった固定資産税の税額のうち、課税時期において未払いの金額

(3) 被相続人の死亡により、相続人その他の者に支給することが確定した退職手当金、功労金その他これらに準ずる給与の金額