非上場株式の財産評価基本通達解説②-議決権の過半数を有しない同族株主の純資産価額の80%評価について見逃している点はないか?
Q 議決権の過半数を有しない同族株主の純資産価額の80%評価について、留意点を教えてくれますか?
A 大会社の場合には、純資産価額の80%評価はできません。
解説
株式の取得者とその同族関係者の有する議決権の合計数が、評価対象会社の議決権総数の50%以下である場合には、純資産価額の80%で評価することができます。
ただし、中会社または小会社の株式評価についての適用に限られます。大会社の場合に、類似業種比準価額ではなく純資産価額を選択した場合には適用がありません(財産評価基本通達179、185)。
財産評価基本通達179(取引相場のない株式の評価の原則)
179 前項により区分された大会社、中会社及び小会社の株式の価額は、それぞれ次による。(昭41直資3-19・昭47直資3-16・昭58直評5外・平6課評2-8外・平10課評2-10外・平12課評2-4外・平29課評2-12外改正)
(1) 大会社の株式の価額は、類似業種比準価額によって評価する。ただし、納税義務者の選択により、1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)によって評価することができる。
(2) 中会社の株式の価額は、次の算式により計算した金額によって評価する。ただし、納税義務者の選択により、算式中の類似業種比準価額を1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)によって計算することができる。
類似業種比準価額×L+1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)×(1-L)
上の算式中の「L」は、評価会社の前項に定める総資産価額(帳簿価額によって計算した金額)及び従業員数又は直前期末以前1年間における取引金額に応じて、それぞれ次に定める割合のうちいずれか大きい方の割合とする。
イ 総資産価額(帳簿価額によって計算した金額)及び従業員数に応ずる割合
卸売業 | 小売・サービス業 | 卸売業、小売・サービス業以外 | 割合 |
---|---|---|---|
4億円以上(従業員数が35人以下の会社を除く。) | 5億円以上(従業員数が35人以下の会社を除く。) | 5億円以上(従業員数が35人以下の会社を除く。) | 0.90 |
2億円以上(従業員数が20人以下の会社を除く。) | 2億5,000万円以上(従業員数が20人以下の会社を除く。) | 2億5,000万円以上(従業員数が20人以下の会社を除く。) | 0.75 |
7,000万円以上(従業員数が5人以下の会社を除く。) | 4,000万円以上(従業員数が5人以下の会社を除く。) | 5,000万円以上(従業員数が5人以下の会社を除く。) | 0.60 |
(注) 複数の区分に該当する場合には、上位の区分に該当するものとする。
ロ 直前期末以前1年間における取引金額に応ずる割合
卸売業 | 小売・サービス業 | 卸売業、小売・サービス業以外 | 割合 |
---|---|---|---|
7億円以上30億円未満 | 5億円以上20億円未満 | 4億円以上15億円未満 | 0.90 |
3億5,000万円以上7億円未満 | 2億5,000万円以上5億円未満 | 2億円以上4億円未満 | 0.75 |
2億円以上3億5,000万円未満 | 6,000万円以上2億5,000万円未満 | 8,000万円以上2億円未満 | 0.60 |
(3) 小会社の株式の価額は、1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)によって評価する。ただし、納税義務者の選択により、Lを0.50として(2)の算式により計算した金額によって評価することができる。
財産評価基本通達185(純資産価額)
185 179((取引相場のない株式の評価の原則))の「1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)」は、課税時期における各資産をこの通達に定めるところにより評価した価額(この場合、評価会社が課税時期前3年以内に取得又は新築した土地及び土地の上に存する権利(以下「土地等」という。)並びに家屋及びその附属設備又は構築物(以下「家屋等」という。)の価額は、課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価するものとし、当該土地等又は当該家屋等に係る帳簿価額が課税時期における通常の取引価額に相当すると認められる場合には、当該帳簿価額に相当する金額によって評価することができるものとする。以下同じ。)の合計額から課税時期における各負債の金額の合計額及び186-2((評価差額に対する法人税額等に相当する金額))により計算した評価差額に対する法人税額等に相当する金額を控除した金額を課税時期における発行済株式数で除して計算した金額とする。ただし、179((取引相場のない株式の評価の原則))の(2)の算式及び(3)の1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)については、株式の取得者とその同族関係者(188((同族株主以外の株主等が取得した株式))の(1)に定める同族関係者をいう。)の有する議決権の合計数が評価会社の議決権総数の50%以下である場合においては、上記により計算した1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)に100 分の80を乗じて計算した金額とする。(昭47直資3-16・昭53直評5外・昭58直評5外・平2直評12外・平12課評2-4外・平15課評2-15外・平18課評2-27外改正)
(注)
1 1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)の計算を行う場合の「発行済株式数」は、直前期末ではなく、課税時期における発行済株式数であることに留意する。
2 上記の「議決権の合計数」及び「議決権総数」には、188-5((種類株式がある場合の議決権総数等))の「株主総会の一部の事項について議決権を行使できない株式に係る議決権の数」を含めるものとする。