非上場株式の財産評価基本通達解説⑦-純資産価額計算上の「評価差額に対する法人税額等に相当する金額」について見逃している点はないか?

Q 純資産価額価額計算上の「評価差額に対する法人税額等に相当する金額」について、留意点があれば教えてくれますか?

A 控除の有無は任意規定ではない点と、控除ができない部分がある点を整理しておく必要があります。

解説
「評価差額に対する法人税額等に相当する金額」を控除した金額が「純資産価額」となりますので、控除の可否は納税者の任意で決められるわけではありません(財産評価基本通達185)。また、現物出資等受入れ差額を加算して計算する点(財産評価基本通達186−2(2))、子会社株式等を純資産価額で評価する場合には控除しない点(財産評価基本通達186−3(注))にも留意が必要です。

 

財産評価基本通達185(純資産価額)

179((取引相場のない株式の評価の原則))の「1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)」は、課税時期における各資産をこの通達に定めるところにより評価した価額(この場合、評価会社が課税時期前3年以内に取得又は新築した土地及び土地の上に存する権利(以下「土地等」という。)並びに家屋及びその附属設備又は構築物(以下「家屋等」という。)の価額は、課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価するものとし、当該土地等又は当該家屋等に係る帳簿価額が課税時期における通常の取引価額に相当すると認められる場合には、当該帳簿価額に相当する金額によって評価することができるものとする。以下同じ。)の合計額から課税時期における各負債の金額の合計額及び186-2((評価差額に対する法人税額等に相当する金額))により計算した評価差額に対する法人税額等に相当する金額を控除した金額を課税時期における発行済株式数で除して計算した金額とする。ただし、179((取引相場のない株式の評価の原則))の(2)の算式及び(3)の1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)については、株式の取得者とその同族関係者(188((同族株主以外の株主等が取得した株式))の(1)に定める同族関係者をいう。)の有する議決権の合計数が評価会社の議決権総数の50%以下である場合においては、上記により計算した1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)に100 分の80を乗じて計算した金額とする。(昭47直資3-16・昭53直評5外・昭58直評5外・平2直評12外・平12課評2-4外・平15課評2-15外・平18課評2-27外改正)

(注)

1 1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)の計算を行う場合の「発行済株式数」は、直前期末ではなく、課税時期における発行済株式数であることに留意する。

2 上記の「議決権の合計数」及び「議決権総数」には、188-5((種類株式がある場合の議決権総数等))の「株主総会の一部の事項について議決権を行使できない株式に係る議決権の数」を含めるものとする。

 

財産評価基本通達186−2(評価差額に対する法人税額等に相当する金額)

186–2  185((純資産価額))の「評価差額に対する法人税額等に相当する金額」は、次の(1) の金額から(2)の金額を控除した残額がある場合におけるその残額に37%(法人税(地方法人税を含む。)、事業税(特別法人事業税を含む。)、道府県民税及び市町村民税の税率の合計に相当する割合)を乗じて計算した金額とする。(昭47直資3-16追加、昭49直資5-14・昭56直評18・昭58直評5外・昭59直評5外・昭62直評11外・平元直評7外・平2直評4外・平6課評2-8外・平10課評2-5外・平11課評2-12外・平12課評2-4外・平18課評2-27外・平22課評2-18外・平24課評2-8外・平26課評2-9外・平27課評2-5外・平28課評2-10外・令元課評2-39外・令3課評2-43外改正)

(1) 課税時期における各資産をこの通達に定めるところにより評価した価額の合計額(以下この項において「課税時期における相続税評価額による総資産価額」という。)から課税時期における各負債の金額の合計額を控除した金額

(2) 課税時期における相続税評価額による総資産価額の計算の基とした各資産の帳簿価額の合計額(当該各資産の中に、現物出資若しくは合併により著しく低い価額で受け入れた資産又は会社法第2条第31号の規定による株式交換(以下この項において「株式交換」という。)、会社法第2条第32号の規定による株式移転(以下この項において「株式移転」という。)若しくは会社法第2条第32号の2の規定による株式交付(以下この項において「株式交付」という。)により著しく低い価額で受け入れた株式(以下この項において、これらの資産又は株式を「現物出資等受入れ資産」という。)がある場合には、当該各資産の帳簿価額の合計額に、現物出資、合併、株式交換、株式移転又は株式交付の時において当該現物出資等受入れ資産をこの通達に定めるところにより評価した価額から当該現物出資等受入れ資産の帳簿価額を控除した金額(以下この項において「現物出資等受入れ差額」という。)を加算した価額)から課税時期における各負債の金額の合計額を控除した金額

(注)

1 現物出資等受入れ資産が合併により著しく低い価額で受け入れた資産(以下(注)1において「合併受入れ資産」という。)である場合において、上記(2)の「この通達に定めるところにより評価した価額」は、当該価額が合併受入れ資産に係る被合併会社の帳簿価額を超えるときには、当該帳簿価額とする。

2 上記(2)の「現物出資等受入れ差額」は、現物出資、合併、株式交換、株式移転又は株式交付の時において現物出資等受入れ資産をこの通達に定めるところにより評価した価額が課税時期において当該現物出資等受入れ資産をこの通達に定めるところにより評価した価額を上回る場合には、課税時期において当該現物出資等受入れ資産をこの通達に定めるところにより評価した価額から当該現物出資等受入れ資産の帳簿価額を控除した金額とする。

3 上記(2)のかっこ書における「現物出資等受入れ差額」の加算は、課税時期における相続税評価額による総資産価額に占める現物出資等受入れ資産の価額(課税時期においてこの通達に定めるところにより評価した価額)の合計額の割合が20%以下である場合には、適用しない。

 

財産評価基本通達186−3(評価会社が有する株式等の純資産価額の計算)

186-3 185≪純資産価額≫の定めにより、課税時期における評価会社の各資産を評価する場合において、当該各資産のうちに取引相場のない株式があるときの当該株式の1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)は、当該株式の発行会社の課税時期における各資産をこの通達に定めるところにより評価した金額の合計額から課税時期における各負債の金額の合計額を控除した金額を課税時期における当該株式の発行会社の発行済株式数で除して計算した金額とする。
なお、評価会社の各資産のうちに出資及び転換社債型新株予約権付社債(197-5((転換社債型新株予約権付社債の評価))の(3)のロに定めるものをいう。)のある場合についても、同様とする。(平2直評12外追加、平11課評2-12外・平12課評2-4外・平15課評2-15外改正)

(注) この場合における1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)の計算に当たっては、186-2≪評価差額に対する法人税額等に相当する金額≫の定めにより計算した評価差額に対する法人税額等に相当する金額を控除しないのであるから留意する。