非上場株式の財産評価基本通達解説⑪-無配当の会社の配当還元価額は直前期に第三者割当増資があった場合に増加する可能性がある点を見逃していないか?
Q 無配当の会社の配当還元価額について、直前期に第三者割当増資が行われた場合の留意点があれば教えてくれますか?
A 配当還元価額は増加します。
解説
配当還元価額の計算における1株当たりの配当金額は、無配のものにあっては2円50銭として計算されるため、増資による資本金等の額の増加と株式数の増加のみが反映されることになります。
1株当たりの資本金等の額が同様であれば配当還元価額に変化はありませんが、時価発行増資では、時価純資産価額に基づいて増資割当株式数が決定されるため、1株当たりの資本金等の額が増加するケースがほとんどです。
したがって、全体の1株当たり配当還元価額が増加することになります。
設例は以下の通りです。
[増資前]
1.直前期末の資本金等の額 1,000万円
2.発行済株式総数 10,000株
3.1株当たりの資本金等の額 1,000円
4.直前期の配当金額 0円
5.直前々期の配当金額 0円
配当還元方式の計算
1.年配当金額 0円
2.無配のものにあっては2円50銭とする
3.(2.5円÷10%)×(1,000円÷50円)=500円
[増資後]
1.直前期末の資本金等の額 2,000万円
2.発行済株式総数 16,000株
3.1株当たりの資本金等の額 1,250円
4.直前期の配当金額 0円
5.直前々期の配当金額 0円
配当還元方式の計算
1.年配当金額 0円
2.無配のものにあっては2円50銭とする
3.(2.5円÷10%)×(1,250円÷50円)=625円
財産評価基本通達188−2(同族株主以外の株主等が取得した株式の評価)
188-2 前項の株式の価額は、その株式に係る年配当金額(183≪評価会社の1株当たりの配当金額等の計算≫の(1)に定める1株当たりの配当金額をいう。ただし、その金額が2円50銭未満のもの及び無配のものにあっては2円50銭とする。)を基として、次の算式により計算した金額によって評価する。ただし、その金額がその株式を179≪取引相場のない株式の評価の原則≫の定めにより評価するものとして計算した金額を超える場合には、179≪取引相場のない株式の評価の原則≫の定めにより計算した金額によって評価する。(昭58直評5外追加、平12課評2-4外・平18課評2-27外改正)
(注) 上記算式の「その株式に係る年配当金額」は1株当たりの資本金等の額を50円とした場合の金額であるので、算式中において、評価会社の直前期末における1株当たりの資本金等の額の50円に対する倍数を乗じて評価額を計算することとしていることに留意する。