事業承継と相続実務⑧-専門性の高い分野を磨くための最適な環境について見逃している点はないか?
Q 専門性の高い分野を磨くための最適な環境について教えてくれますか?
A 競争環境があり、お手本となる専門家と出会える環境が最適だと考えます。
解説
まわりと切磋琢磨できる競争環境において、人の成長は一層促進されるものだと思います。
専門性の高い税務経験を積むうえで、競争のない事務所にいる場合には、成長スピードが遅くなる可能性が高まります。
税理士資格を取得してすぐに独立することは、専門性を高める点で、競争のない世界に自分を追いやる可能性を秘めています。
税理士又は税理士を目指している人で、「こんな税理士になりたい」と思えるようなお手本はいるでしょうか?
個人事務所には所長税理士しか「税理士」がいません。
したがって、限定された場所で一部の税理士しか知らないために、専門家のレベルを低く見積もってしまう可能性があります。
ただでさえ狭い税理士業界の中の、一部の税理士との接点のみから生まれた「税理士像」には、相当の偏りがある点を、誰もが意識したほうがよいと思います。
税務申告書の作成業務は専門性が高くないため、どの税理士が作成しても大差はありません。
税務申告書の作成業務を将来に渡って行っていくのであれば、まわりと切磋琢磨して経験を磨く必要は少ないですし、資格取得後にすぐに独立することも問題ないと思います。
ただし、専門性の高い分野の経験値は、携わった案件の質と量で磨かれていく側面が強いため、様々な案件を経験してきた人とそうでない人とでは、専門家として桁違いの経験値の差が存在します。
例えば、専門性の高い組織再編や事業承継に関する分野となると、経験がものをいう世界です。国際税務となると、経験のない税理士は何も知りません。
税務申告業務ではなく専門性の高い分野を志すのであれば、十分な経験を重ねたうえで独立することをお勧めします。
大手税理士法人に入ることで、競争環境に置かれた状況下で、専門性の高い税務経験を積むことができます。
大手税理士法人では、多様な専門分野の存在を知ることができ、その分野の最前線にいる税理士のレベルを目の当たりにできます。
税理士として独立を目指す方は、1人の世界で知れること、経験できることの幅の狭さを理解する必要があると思います。
そのうえで、独立後にどんなサービスをクライアントに提供したいかをよくよく考えたうえで、独立の意義を問い、そのタイミングを決断する必要があると思います。