合同会社のメリットと留意事項④-合同会社の定款に社員の死亡した場合の持分承継の定めがあれば、定款規定の承継者に問題なく相続されると考えていないか?
Q合同会社を設立しようと考えています。子供が3人いるのですが、合同会社持分は長男に相続させるつもりです。合同会社の定款に社員の死亡した場合の持分の承継先を長男とする旨の定めを設けておけば、長男に問題なく相続することができますか?
A相続人が複数いるときは、合同会社持分が共有となることで、法的に不安定な状態が生じます。
解説
相続発生時に相続人が複数いる場合、相続財産は相続人の共有となります(民法第898条)。したがって、合同会社持分も共有となるため、相続人全員が合同会社の社員になります。遺産分割協議により長男が当該持分を相続することが確定した場合には、その効力は相続開始の時にさかのぼって生じるのですが(民法第909条)、分割協議中は相続人の共有に属することになります。また、分割協議次第では長男が当該持分を相続できるかもわかりません。
相続人が複数いる場合には、自身の死亡後まで考えて、遺言により「合同会社持分は長男に相続させる」ことを明確にしておく必要があると考えます。
(共同相続の効力)
民法第898条 相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。
民法第899条 各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。
(遺産の分割の効力)
民法第909条 遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。
会社法第608条(相続及び合併の場合の特則)
持分会社は、その社員が死亡した場合又は合併により消滅した場合における当該社員の相続人その他の一般承継人が当該社員の持分を承継する旨を定款で定めることができる。
2 第六百四条第二項の規定にかかわらず、前項の規定による定款の定めがある場合には、同項の一般承継人(社員以外のものに限る。)は、同項の持分を承継した時に、当該持分を有する社員となる。
3 第一項の定款の定めがある場合には、持分会社は、同項の一般承継人が持分を承継した時に、当該一般承継人に係る定款の変更をしたものとみなす。
4 第一項の一般承継人(相続により持分を承継したものであって、出資に係る払込み又は給付の全部又は一部を履行していないものに限る。)が二人以上ある場合には、各一般承継人は、連帯して当該出資に係る払込み又は給付の履行をする責任を負う。
5 第一項の一般承継人(相続により持分を承継したものに限る。)が二人以上ある場合には、各一般承継人は、承継した持分についての権利を行使する者一人を定めなければ、当該持分についての権利を行使することができない。ただし、持分会社が当該権利を行使することに同意した場合は、この限りでない。
5 第一項の一般承継人(相続により持分を承継したものに限る。)が二人以上ある場合には、各一般承継人は、承継した持分についての権利を行使する者一人を定めなければ、当該持分についての権利を行使することができない。ただし、持分会社が当該権利を行使することに同意した場合は、この限りでない。
会社法第675条(相続及び合併による退社の特則)
清算持分会社の社員が死亡した場合又は合併により消滅した場合には、第六百八条第一項の定款の定めがないときであっても、当該社員の相続人その他の一般承継人は、当該社員の持分を承継する。この場合においては、同条第四項及び第五項の規定を準用する。