非上場会社の従業員持株会①-従業員持株会が2種類の株式を保有した場合に、法律上何が問題となるかを明確にせずに、ガイドラインに書いてあるからと整理していないか?

Q従業員持株会は2種類以上の株式を取得できないと、日本証券業協会「持株制度に関するガイドライン」に記載がありますが、2種類以上を保有した場合にはどのような法律上の問題がありますか?

A従業員持株会の保有株式が金融商品取引法上の「みなし有価証券」の例外規定に該当しない場合、金融商品取引法の規制対象となり、従業員持株会の株式募集につき金融商品取引業の登録が必要となる可能性があります。登録なしにこれを行った場合には、金融商品取引法違反となります。

解説
金融商品取引法では、出資又は拠出をした金銭を充てて行う事業から生じる配当を受ける権利を「みなし有価証券」として取り扱います。従業員持株会も同様の行為を行うことから、同法の例外規定に該当していることが重要となります(金融商品取引法第2条第2項第5号)。従業員持株会が「みなし有価証券」に該当しないためには、以下の2点を充足する必要があります。

①株券の買付けを一定の計画に従い、個別の投資判断に基づかずに継続的に行うこと(金融商品取引法施行令第1条の3の3第5号)
②1人あたり、1回あたりの拠出金額が100万円に満たないこと(金融商品取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令第6条第2項)

 

金融商品取引法第2条第2項第5号(定義)
この法律において「有価証券」とは、次に掲げるものをいう。

2 前項第一号から第十五号までに掲げる有価証券、同項第十七号に掲げる有価証券(同項第十六号に掲げる有価証券の性質を有するものを除く。)及び同項第十八号に掲げる有価証券に表示されるべき権利並びに同項第十六号に掲げる有価証券、同項第十七号に掲げる有価証券(同項第十六号に掲げる有価証券の性質を有するものに限る。)及び同項第十九号から第二十一号までに掲げる有価証券であつて内閣府令で定めるものに表示されるべき権利(以下この項及び次項において「有価証券表示権利」と総称する。)は、有価証券表示権利について当該権利を表示する当該有価証券が発行されていない場合においても、当該権利を当該有価証券とみなし、電子記録債権(電子記録債権法(平成十九年法律第百二号)第二条第一項に規定する電子記録債権をいう。以下この項において同じ。)のうち、流通性その他の事情を勘案し、社債券その他の前項各号に掲げる有価証券とみなすことが必要と認められるものとして政令で定めるもの(第七号及び次項において「特定電子記録債権」という。)は、当該電子記録債権を当該有価証券とみなし、次に掲げる権利は、証券又は証書に表示されるべき権利以外の権利であつても有価証券とみなして、この法律の規定を適用する。

五 民法(明治二十九年法律第八十九号)第六百六十七条第一項に規定する組合契約、商法(明治三十二年法律第四十八号)第五百三十五条に規定する匿名組合契約、投資事業有限責任組合契約に関する法律(平成十年法律第九十号)第三条第一項に規定する投資事業有限責任組合契約又は有限責任事業組合契約に関する法律(平成十七年法律第四十号)第三条第一項に規定する有限責任事業組合契約に基づく権利、社団法人の社員権その他の権利(外国の法令に基づくものを除く。)のうち、当該権利を有する者(以下この号において「出資者」という。)が出資又は拠出をした金銭(これに類するものとして政令で定めるものを含む。)を充てて行う事業(以下この号において「出資対象事業」という。)から生ずる収益の配当又は当該出資対象事業に係る財産の分配を受けることができる権利であつて、次のいずれにも該当しないもの(前項各号に掲げる有価証券に表示される権利及びこの項(この号を除く。)の規定により有価証券とみなされる権利を除く。)
イ 出資者の全員が出資対象事業に関与する場合として政令で定める場合における当該出資者の権利
ロ 出資者がその出資又は拠出の額を超えて収益の配当又は出資対象事業に係る財産の分配を受けることがないことを内容とする当該出資者の権利(イに掲げる権利を除く。)
ハ 保険業法(平成七年法律第百五号)第二条第一項に規定する保険業を行う者が保険者となる保険契約、農業協同組合法(昭和二十二年法律第百三十二号)第十条第一項第十号に規定する事業を行う同法第四条に規定する組合と締結した共済契約、消費生活協同組合法(昭和二十三年法律第二百号)第十条第二項に規定する共済事業を行う同法第四条に規定する組合と締結した共済契約、水産業協同組合法(昭和二十三年法律第二百四十二号)第十一条第一項第十二号、第九十三条第一項第六号の二若しくは第百条の二第一項第一号に規定する事業を行う同法第二条に規定する組合と締結した共済契約、中小企業等協同組合法(昭和二十四年法律第百八十一号)第九条の二第七項に規定する共済事業を行う同法第三条に規定する組合と締結した共済契約又は不動産特定共同事業法(平成六年法律第七十七号)第二条第三項に規定する不動産特定共同事業契約(同条第九項に規定する特例事業者と締結したものを除く。)に基づく権利(イ及びロに掲げる権利を除く。)
ニ イからハまでに掲げるもののほか、当該権利を有価証券とみなさなくても公益又は出資者の保護のため支障を生ずることがないと認められるものとして政令で定める権利

 

金融商品取引法施行令第1条の3の3第5号(有価証券とみなさなくても公益等のため支障を生ずることがないと認められる権利)
法第二条第二項第五号ニに規定する政令で定める権利は、次に掲げるものとする。
一 保険業法(平成七年法律第百五号)第二条第一項各号に掲げる事業に係る契約に基づく権利
二 本邦の法令に基づいて設立された法人(公益社団法人以外の一般社団法人及び公益財団法人以外の一般財団法人を除く。)に対する出資又は拠出に係る権利(法第二条第一項第六号から第九号まで及び第十一号に掲げる有価証券に表示される権利並びに同条第二項の規定により有価証券とみなされる同項第三号に掲げる権利を除く。)
三 分収林特別措置法(昭和三十三年法律第五十七号)第二条第三項に規定する分収林契約に基づく権利
四 次に掲げる者のみを当事者とする組合契約等(民法第六百六十七条第一項に規定する組合契約その他の継続的な契約をいう。)に基づく権利であつて、当該権利に係る出資対象事業が専ら次に掲げる者の業務を行う事業であるもの
イ 公認会計士
ロ 弁護士(外国法事務弁護士を含む。)
ハ 司法書士
ニ 土地家屋調査士
ホ 行政書士
ヘ 税理士
ト 不動産鑑定士
チ 社会保険労務士
リ 弁理士
五 株券又は投資証券(投資信託及び投資法人に関する法律(昭和二十六年法律第百九十八号)に規定する投資証券をいう。以下この号において同じ。)の発行者の役員、従業員その他の内閣府令で定める者(以下この号及び第二条の十二の四第二項第四号において「役員等」という。)が当該発行者の他の役員等と共同して当該発行者の株券又は投資証券の買付けを、一定の計画に従い、個別の投資判断に基づかず、継続的に行うことを約する契約のうち、内閣府令で定める要件に該当するものに基づく権利
六 前各号に掲げるものに準ずるものとして内閣府令で定めるもの

 

金融商品取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令第6条(持株会)
令第一条の三の三第五号に規定する内閣府令で定める者は、株券の発行者である会社又はその被支配会社等の役員(相談役、顧問その他いかなる名称を有する者であるかを問わず、当該会社又はその被支配会社等に対し役員と同等以上の支配力を有するものと認められる者を含む。)又は従業員とする。
2 令第一条の三の三第五号に規定する内閣府令で定める要件は、各役員等(同号に規定する役員等をいう。)の一回当たりの拠出金額が百万円に満たないこととする。
3 第一項の「被支配会社等」とは、会社法(平成十七年法律第八十六号)第二条第三号に規定する子会社に該当する会社をいう。

持株会制度に関するガイドライン
https://www.jsda.or.jp/shijyo/minasama/content/20201020_motikabuguideline.pdf