非上場会社の従業員持株会⑦-従業員持株会(任意組合方式)で各持株会員に配当収入が帰属する税法上の根拠を整理しないまま実務を行っていないか?

Q従業員持株会(任意組合方式)では、各持株会員に配当収入が帰属して課税されますが、税法上の整理を教えていただけますか?

A任意組合員に対する法令規定はありませんが、実質所得者課税の原則(所得税法第12条)を根拠に、各組合員の出資持分に応じて配当収入が帰属することになります。

解説
通常、従業員持株会は民法上の組合として設立されます(民法第667条)。民法上の組合は、単なる個人の集合体であり、人格のない社団には含まれません(法人税法第2条第8号、法人税基本通達1−1−1)。任意組合員に対する法令の規定はありませんが、出資持分にかかる配当金については、実質所得者課税の原則(所得税法第12条)により、各組合員に帰属することになり、各個人の配当所得となります(パススルー課税)。
従業員持株会を人格のない社団として設立した場合には、株式は社団が保有することになり、配当金は法人税の対象となります。個人が社団を通じて当該配当金を受け取る場合には、収益の分配金として雑所得となります(所得税基本通達35−1(6))。

 

民法第667条(組合契約)
組合契約は、各当事者が出資をして共同の事業を営むことを約することによって、その効力を生ずる。
2 出資は、労務をその目的とすることができる。

 

法人税法第2条(定義)
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
八 人格のない社団等 法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものをいう。

 

法人税基本通達1-1-1(法人でない社団の範囲)
法第2条第8号《人格のない社団等の意義》に規定する「法人でない社団」とは、多数の者が一定の目的を達成するために結合した団体のうち法人格を有しないもので、単なる個人の集合体でなく、団体としての組織を有して統一された意志の下にその構成員の個性を超越して活動を行うものをいい、次に掲げるようなものは、これに含まれない。(昭56年直法2-16「二」、「六」により改正)

(1) 民法第667条《組合契約》の規定による組合
(2) 商法第535条《匿名組合契約》の規定による匿名組合

 

所得税法第12条(実質所得者課税の原則)
資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であつて、その収益を享受せず、その者以外の者がその収益を享受する場合には、その収益は、これを享受する者に帰属するものとして、この法律の規定を適用する。

 

所得税基本通達35-1(6)(雑所得の例示)
次に掲げるようなものに係る所得は、雑所得に該当する。(平8課法8-2、課所4-5、平11課所4-1、平22課個2-25、課審4-45、平23課個2-33、課法9-9、課審4-46、平27課個2-11、課法10-16、課審5-7改正)

(6) 人格のない社団等の構成員がその構成員たる資格において当該人格のない社団等から受ける収益の分配金(いわゆる清算分配金及び脱退により受ける持分の払戻金を除く。)