非上場会社の従業員持株会⑩-従業員持株会(任意組合方式)に株式を現物組入れする場合の留意事項を見逃していないか?
Q従業員持株会を設立し、既に株式を保有する従業員には現物組入れしてもらうことを考えていますが、現物組入れ時に譲渡課税は生じますか?
A既に保有する株式の取得価額と、現物組入れする際の株式価額が同額であれば課税は生じませんが、相当に異なる場合には譲渡課税が生じる可能性があります。
解説
従業員持株会(任意組合方式)において、現物組入れする株式の取得価額と現物組入れする際の株式価額が同額であれば、課税が生じることはありません。ただし、従業員持株会の保有株式は持株会員全員の共有に属するため(民法第668条)、現物組入れする株式の取得価額が現物組入れする際の株式価額と著しく異なる場合には、当該株式を現物組入れすることにより、部分的に譲渡課税が生じる場合があります(租税特別措置法施行令第39条の31第5項)。
なお、持株会制度に関するガイドラインでは、現物組入れできる条件として「合理的な取得価額を証明することができる株式を組入れる場合」に制限している点には留意が必要です。
民法第668条(組合財産の共有)
各組合員の出資その他の組合財産は、総組合員の共有に属する。
租税特別措置法施行令第39条の31第5項(組合事業等による損失がある場合の課税の特例)
5 法第六十七条の十二第一項に規定する出資の価額又は信託財産の帳簿価額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額は、組合契約に係る組合員又は信託の受益者である法人のその組合事業又は信託に係る第一号及び第二号に掲げる金額の合計額から第三号に掲げる金額を減算した金額(次項及び第十七項において「調整出資等金額」という。)とする。
一 当該事業年度にその終了の日が属する組合損益計算期間(組合等損失額又は組合等利益額(法第六十七条の十二第二項に規定する政令で定める金額をいう。)の計算の基礎となる当該組合事業に係る損益が計算される期間をいう。次項において同じ。)のうち最も新しいものの終了の時(信託にあつては、当該事業年度終了の時。第三号において「最終組合損益計算期間等終了時」という。)までに当該組合契約又は信託行為に基づいて出資又は信託をした金銭の額に金銭以外の資産(以下この項において「現物資産」という。)に係る次に掲げる金額の合計額(当該組合契約が匿名組合契約等である場合には、当該現物資産の価額)を加算した金額(組合員持分担保債務がある場合にはその額に相当する金額を控除した金額とし、金銭若しくは現物資産と負債を併せて出資をした場合又は資産の信託と併せて委託者の負債を信託財産に属する負債とした場合にはこれらの負債の額を減算した金額とする。)
イ 当該現物資産の価額に当該組合契約に係る他の組合員(第三号イにおいて「他の組合員」という。)の当該組合事業に係る組合財産持分割合(組合財産に対する各組合員の持分の割合をいう。以下この条において同じ。)を合計した割合又は当該信託の他の受益者の当該現物資産に係る信託財産持分割合(現物資産の価額に対する各受益者が法人税法第十二条第一項の規定により有するものとみなされる部分の価額の割合をいう。以下この条において同じ。)を合計した割合を乗じて計算した金額
ロ 当該法人の当該出資又は当該信託の直前の当該現物資産の帳簿価額に当該法人の当該組合事業に係る組合財産持分割合又は当該現物資産に係る信託財産持分割合を乗じて計算した金額
二 次に掲げる金額の合計額
イ 当該法人の当該事業年度前の各事業年度における法人税法施行令第九条第一項第一号イからニまで、ヘ及びトに掲げる金額の合計額から同号リ及びルからワまでに掲げる金額を減算した金額(当該金額のうちに留保していない金額がある場合には、当該留保していない金額を減算した金額)のうち、当該組合事業に帰せられる部分の金額又は当該信託の信託損益帰属額(法人税法第十二条第一項の規定により当該法人の収益及び費用とみなされる当該信託の信託財産に帰せられる収益及び費用に係る損益の額をいう。ロにおいて同じ。)に係る部分の金額の合計額
ロ 当該法人の当該事業年度前の各連結事業年度における法人税法施行令第九条の二第一項第一号イからハまで、ヘ及びトに掲げる金額の合計額から同号リ及びルからワまでに掲げる金額を減算した金額(当該金額のうちに留保していない金額がある場合には、当該留保していない金額を減算した金額)のうち、当該組合事業に帰せられる部分の金額又は当該信託の信託損益帰属額に係る部分の金額の合計額
三 最終組合損益計算期間等終了時までに分配等(当該組合事業に係る利益の分配若しくは出資の払戻し(組合員持分担保債務に相当する払戻しを除く。)又は信託財産からの給付をいう。以下この号において同じ。)として交付を受けた金銭の額に現物資産に係る次に掲げる金額の合計額(当該組合契約が匿名組合契約等である場合には、当該現物資産の価額)を加算した金額(金銭又は現物資産と負債を併せて分配等として交付を受けた場合には、当該負債の額を減算した金額)
イ 当該現物資産の価額に当該分配等の直前の他の組合員の当該組合事業に係る組合財産持分割合を合計した割合又は当該信託の他の受益者の当該現物資産に係る信託財産持分割合を合計した割合を乗じて計算した金額
ロ 当該法人の当該分配等の直前の当該現物資産の帳簿価額
持株会ガイドライン14.現物組入れの制限
(1) 会員が既に有している取得対象株式について、従業員持株会はその組入れを行わないものとする。ただし、非上場株式を取得対象株式とする従業員持株会を組織するに当たり、合理的な取得価額を証明することができる株式を組入れる場合には、この限りでない。
(2) 上記(1)本文の規定にかかわらず、従業員持株会(以下「受入側持株会」という。)は、次の全てを満たす限りにおいて、他の持株会(以下「拠出側 持株会」という。)の会員の所有持分の移管を受け付けることができる。
イ 当該会員が、出向、転籍又は企業再編等を事由として受入側持株会に入会する資格を得ていること。
ロ 当該会員の所有持分が、受入側持株会の取得対象株式に係るものであること。
ハ 当該会員が移管に同意していること。
ニ 双方の持株会の事務の取扱いを同一の金融商品取引業者が行うことにより、移管する持分に関する取得価額の証明が可能であること。
ホ 移管する持分の数量等が、上記ニの金融商品取引業者において取扱えるものであること。
(1) 会員が既に有している取得対象株式について、従業員持株会はその組入れを行わないものとする。ただし、非上場株式を取得対象株式とする従業員持株会を組織するに当たり、合理的な取得価額を証明することができる株式を組入れる場合には、この限りでない。
(2) 上記(1)本文の規定にかかわらず、従業員持株会(以下「受入側持株会」という。)は、次の全てを満たす限りにおいて、他の持株会(以下「拠出側 持株会」という。)の会員の所有持分の移管を受け付けることができる。
イ 当該会員が、出向、転籍又は企業再編等を事由として受入側持株会に入会する資格を得ていること。
ロ 当該会員の所有持分が、受入側持株会の取得対象株式に係るものであること。
ハ 当該会員が移管に同意していること。
ニ 双方の持株会の事務の取扱いを同一の金融商品取引業者が行うことにより、移管する持分に関する取得価額の証明が可能であること。
ホ 移管する持分の数量等が、上記ニの金融商品取引業者において取扱えるものであること。