個人税務での勘違い防止⑥-国外転出時課税で国外転出の日から5年以内に帰国した場合の還付手続きについて、銘柄ごとに選択できると考えていないか?

Q国外転出時課税の申告を行い、納税しています。国外転出の日から5年以内に帰国予定ですが、帰国した際の還付手続の留意事項を教えてくれますか?

A帰国日から4ヶ月以内に更正の請求をする必要があります。銘柄別に還付の請求はできないため、引き続き所有している対象資産については、すべて還付請求の対象とするか、すべて対象としないかのいずれかとなります。

解説
国外転出時課税の申告をした方が国外転出の日から5年以内に帰国をした場合、その帰国の時まで引き続き所有等している対象資産については、国外転出時課税の 適用がなかったものとして、課税の取消しをすることができます(所得税法第60条の2第6項第1項)。課税の取消しをするためには、帰国などをした日から4か月以内に更正の請求又 は修正申告をする必要があります(所得税法第151条の2第1項、同法第153条の2第1項)。
なお、納税した日から還付加算金が発生するわけではなく、更正の請求があった日の翌日から起算して3か月を経過する日とその更正の請求に係る更正があった日の翌日から起算して1か月を経過する日とのいずれか早い日の翌日から還付の支払決定日又は充当日までの期間について還付加算金が発生します。

所得税法第62条の2(国外転出をする場合の譲渡所得等の特例)
6 国外転出の日の属する年分の所得税につき第一項から第三項までの規定の適用を受けるべき個人が、当該国外転出の時に有していた有価証券等又は契約を締結していた未決済信用取引等若しくは未決済デリバティブ取引のうち次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定めるものについては、第一項から第三項までの居住者の当該年分の事業所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算上これらの規定により行われたものとみなされた有価証券等の譲渡、未決済信用取引等の決済及び未決済デリバティブ取引の決済の全てがなかつたものとすることができる。ただし、当該有価証券等の譲渡による事業所得の金額、譲渡所得の金額若しくは雑所得の金額、当該未決済信用取引等の決済による事業所得の金額若しくは雑所得の金額又は当該未決済デリバティブ取引の決済による事業所得の金額若しくは雑所得の金額(以下この項において「有価証券等に係る譲渡所得等の金額」という。)につきその計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき確定申告書を提出し、又は確定申告書を提出していなかつたことにより、当該個人の当該国外転出の日から五年を経過する日までに決定若しくは更正がされ、又は期限後申告書若しくは修正申告書を提出した場合(同日までに期限後申告書又は修正申告書の提出があつた場合において、その提出が、所得税についての調査があつたことにより当該所得税について決定又は更正があることを予知してなされたものでないときを除く。)における当該隠蔽し、又は仮装した事実に基づく有価証券等に係る譲渡所得等の金額に相当する金額については、この限りでない。
一 当該個人が、当該国外転出の日から五年を経過する日までに帰国(国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて一年以上居所を有することとなることをいう。以下この項及び次条第六項において同じ。)をした場合 当該帰国の時まで引き続き有している有価証券等又は決済していない未決済信用取引等若しくは未決済デリバティブ取引
所得税法第151条の2(国外転出をした者が帰国をした場合等の修正申告の特例)
第六十条の二第一項(国外転出をする場合の譲渡所得等の特例)に規定する国外転出の日の属する年分の所得税につき確定申告書を提出し、又は決定を受けた者(その相続人を含む。)は、当該確定申告書又は決定に係る年分の総所得金額のうちに同条第六項本文(同条第七項の規定により適用する場合を含む。)の規定の適用がある同条第六項に規定する有価証券等に係る譲渡所得等の金額が含まれていることにより、当該国外転出の日の属する年分の所得税につき国税通則法第十九条第一項各号又は第二項各号(修正申告)の事由が生じた場合には、第六十条の二第六項各号に掲げる場合に該当することとなつた日から四月以内に限り、税務署長に対し、修正申告書を提出することができる。
2 前項の規定による修正申告書の提出があつた場合における国税通則法の規定の適用については、同法第七十条第一項(国税の更正、決定等の期間制限)中「法定申告期限」とあり、及び同法第七十二条第一項(国税の徴収権の消滅時効)中「法定納期限」とあるのは、「所得税法第百五十一条の二第一項(国外転出をした者が帰国をした場合等の修正申告の特例)の規定により修正申告書を提出した日」とする。
所得税法第153条の2(国外転出をした者が帰国をした場合等の更正の請求の特例)

第六十条の二第一項(国外転出をする場合の譲渡所得等の特例)に規定する国外転出の日の属する年分の所得税につき確定申告書を提出し、又は決定を受けた者(その相続人を含む。)は、当該確定申告書又は決定に係る年分の総所得金額のうちに同条第六項本文(同条第七項の規定により適用する場合を含む。)の規定の適用がある同条第六項に規定する有価証券等に係る譲渡所得等の金額が含まれていることにより、当該年分の所得税につき次に掲げる場合に該当することとなるときは、同項各号に掲げる場合に該当することとなつた日から四月以内に、税務署長に対し、更正の請求をすることができる。

一 第百二十条第一項第三号、第五号又は第七号(確定所得申告)に掲げる金額(当該金額につき修正申告書の提出又は更正があつた場合には、その申告又は更正後の金額)が過大となる場合
二 第百二十条第一項第四号、第六号若しくは第八号又は第百二十三条第二項第一号若しくは第五号から第八号まで(確定損失申告)に掲げる金額(当該金額につき修正申告書の提出又は更正があつた場合には、その申告又は更正後の金額)が過少となる場合
2 前項の規定は、第六十条の二第八項(同条第九項において準用する場合を含む。)の規定の適用がある個人について準用する。この場合において、前項中「同条第六項本文(同条第七項の規定により適用する場合を含む。)」とあるのは「同条第八項(同条第九項において準用する場合を含む。)」と、「同項各号に掲げる場合に該当することとなつた日」とあるのは「同条第八項又は第九項に規定する譲渡若しくは決済又は限定相続等による移転の日」と読み替えるものとする。
3 第一項の規定は、第六十条の二第十項の規定の適用がある個人について準用する。この場合において、第一項中「同条第六項本文(同条第七項の規定により適用する場合を含む。)」とあるのは「同条第十項」と、「同項各号に掲げる場合に該当することとなつた日」とあるのは「同日から五年を経過する日(その者が第百三十七条の二第二項(国外転出をする場合の譲渡所得等の特例の適用がある場合の納税猶予)の規定により同条第一項の規定による納税の猶予を受けている場合にあつては、十年を経過する日)」と読み替えるものとする。