個人税務での勘違い防止⑩-シンガポール在住の非居住者が日本の事業会社から配当を受ける場合の租税条約の届出書の提出を見逃していないか?

Qシンガポール居住者(日本で非居住者)です。日本の事業会社の株式を100%保有しており、当該日本法人から配当を実施する予定ですが、日本での課税において租税条約で規定している限度税率の適用を受けるための留意事項を教えていただけますか?

A配当が支払われる前日までに、当該支払法人経由で租税条約に関する届出書(様式1)を提出しておく必要があります。

解説
日本法人による非居住者への配当については、支払を受ける日の前日までに、支払者を経由して「租税条約に関する届出書(様式1)」を支払者の納税地の所轄税務署長に提出しておくことで、租税条約で規定している限度税率が適用されて源泉徴収が行われます。非居住者が支払を受ける日の前日までに当該届出書を税務署長へ提出していない場合には、支払者は租税条約に規定している限度税率を適用することはできず、日本における通常の源泉徴収税率によって源泉徴収を行うことになります。ただしこの場合でも、後日届出書とともに「租税条約に関する源泉徴収税額の還付請求書(様式11)」を、支払者を通じて支払者の納税地の所轄税務署長に提出することで、払い過ぎた分の還付を請求することはできます。

 

日星租税条約第10条第2項(b)

1 一方の締約国の居住者である法人が他方の締約国の居住者に支払う配当に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

2 1の配当に対しては、これを支払う法人が居住者とされる締約国においても、当該締約国の法令に従って租税を課することができる。その租税の額は、当該配当の受領者が当該配当の受益者である場合には、次の額を超えないものとする。

(a) 当該配当の受益者が、利得の分配に係る事業年度の終了の日に先立つ六箇月の期間を通じ、当該配当を支払う法人の議決権のある株式の少なくとも二十五パーセントを所有する法人である場合には、当該配当の額の五パーセント

(b) その他のすべての場合には、当該配当の額の十五パーセント

この2の規定は、当該配当を支払う法人のその配当に充てられる利得に対する課税に影響を及ぼすものではない。

3 この条において、「配当」とは、株式その他利得の分配を受ける権利(信用に係る債権を除く。)から生ずる所得及びその他の持分から生ずる所得であって分配を行う法人が居住者とされる締約国の税法上株式から生ずる所得と同様に取り扱われるものをいう。

4 シンガポールが法人の利得又は所得に対する租税以外に配当に対して租税を課さないこととしている限り、シンガポールの居住者である法人が日本国の居住者に支払う配当については、2の規定にかかわらず、シンガポールにおいて当該法人の利得又は所得に対する租税以外の租税を免除する。

5 1及び2の規定は、一方の締約国の居住者である配当の受益者が、当該配当を支払う法人が居住者とされる他方の締約国において当該他方の締約国内にある恒久的施設を通じて事業を行い又は当該他方の締約国において当該他方の締約国内にある固定的施設を通じて独立の人的役務を提供する場合において、当該配当の支払の基因となった株式その他の持分が当該恒久的施設又は当該固定的施設と実質的な関連を有するものであるときは、適用しない。この場合には、第七条又は第十四条の規定を適用する。

6 一方の締約国の居住者である法人が他方の締約国から利得又は所得を取得する場合には、当該他方の締約国は、当該法人の支払う配当及び当該法人の留保所得については、これらの配当及び留保所得の全部又は一部が当該他方の締約国内において生じた利得又は所得から成るときにおいても、当該配当(当該他方の締約国の居住者に支払われる配当及び配当の支払の基因となった株式その他の持分が当該他方の締約国内にある恒久的施設又は固定的施設と実質的な関連を有するものである場合の配当を除く。)に対していかなる租税も課することができず、また、当該留保所得に対して租税を課することができない。

 

国税庁HP タックスアンサーNo.2878 国内源泉所得の範囲(平成29年分以降)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2878.htm

 

国税庁HP タックスアンサーNo.2885 非居住者等に対する源泉徴収のしくみ
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2885.htm

 

国税庁HP タックスアンサーNo.2884 源泉徴収義務者・源泉徴収の税率
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2884.htm

 

国税庁HP タックスアンサーNo.2888 租税条約に関する届出書の提出(源泉徴収関係)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2888.htm