非上場株式の総則6項による否認⑧-酒類等の大手卸売会社が総則6項で否認された後の、更なる否認事案を見逃していないか?
Q 酒類等の大手卸売会社の総則6項による否認事案が確定し、その直後の取引でも否認された事案があると聞きましたが、概要だけ教えていただけますか?
A 父の相続税申告で当局と争った資産管理会社持分について、相続取得した母がグループ法人に譲渡した際の価額について、再び当局と争いとなりました。
解説
当初事案
大手卸売会社の総則6項による否認が行われ、平成17年1月19日の東京高裁判決で納税者敗訴が確定しました。
非上場株式の総則6項による否認⑦-配当還元方式の適用スキームで総則6項の否認を受けた大手卸売会社の事案を抑えずに実務を行なっていないか?
その後の事案
父の相続によりB社持分を取得した母が、平成17年3月31日に、事業会社であるA社と親族(子・孫)の資産管理会社(以下、C社)の2社に、B社持分を譲渡
取引におけるB社持分評価額
類似業種比準価額と純資産価額(財産評価通達185但し書きによる80%を乗じて計算)の折衷方式により計算
当局の考えるB社持分評価額
B社が保有するA社株式に配当還元方式の適用はできないため(当初事案同様)、B社は株式保有特定会社に該当(株式保有割合約98%)。したがって、純資産価額方式(財産評価通達185但し書きによる80%は不可)または、S1+S2方式によりB社持分を評価すべきであると指摘
結果①受贈益課税の認定
A社とC社が取得したB社持分は、時価よりも著しく低い価額での取得であるとして、2社に受贈益課税が確定(平成27年3月27日東京地裁、平成28年4月21日東京高裁)
結果②みなし贈与課税の認定
2社の株式・出資を保有する同族株主(子・孫)に対して、株主への利益移転があったものとして、母から親族へ贈与したものとみなして、贈与税課税が確定(平成26年10月29日東京地裁判決、平成27年4月22日東京高裁判決)
財産評価基本通達185(純資産価額)
185 179((取引相場のない株式の評価の原則))の「1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)」は、課税時期における各資産をこの通達に定めるところにより評価した価額(この場合、評価会社が課税時期前3年以内に取得又は新築した土地及び土地の上に存する権利(以下「土地等」という。)並びに家屋及びその附属設備又は構築物(以下「家屋等」という。)の価額は、課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価するものとし、当該土地等又は当該家屋等に係る帳簿価額が課税時期における通常の取引価額に相当すると認められる場合には、当該帳簿価額に相当する金額によって評価することができるものとする。以下同じ。)の合計額から課税時期における各負債の金額の合計額及び186-2((評価差額に対する法人税額等に相当する金額))により計算した評価差額に対する法人税額等に相当する金額を控除した金額を課税時期における発行済株式数で除して計算した金額とする。ただし、179((取引相場のない株式の評価の原則))の(2)の算式及び(3)の1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)については、株式の取得者とその同族関係者(188((同族株主以外の株主等が取得した株式))の(1)に定める同族関係者をいう。)の有する議決権の合計数が評価会社の議決権総数の50%以下である場合においては、上記により計算した1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)に100 分の80を乗じて計算した金額とする。(昭47直資3-16・昭53直評5外・昭58直評5外・平2直評12外・平12課評2-4外・平15課評2-15外・平18課評2-27外改正)
(注)
1 1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)の計算を行う場合の「発行済株式数」は、直前期末ではなく、課税時期における発行済株式数であることに留意する。
2 上記の「議決権の合計数」及び「議決権総数」には、188-5((種類株式がある場合の議決権総数等))の「株主総会の一部の事項について議決権を行使できない株式に係る議決権の数」を含めるものとする。