分散した非上場株式の集約⑤-株式併合によるスクイーズアウトの効力発生日を株主総会決議日としていないか?
Q株式が分散しており、疎遠となっている少数株主と株式の買取交渉を行うことが難しいことから、株式併合によるスクイーズアウトを実行しました。昨年12月に株主総会特別決議で可決され、裁判所に「端株相当株式任意売却許可申立書」を提出しました。本年1月下旬に裁判所の許可決定があり、これを受けて株主に対する端株相当株式の買取にかかる対価の支払いを行いました。株式併合による自己株式の取得の効力発生日(株主の観点からは株式譲渡の効力発生日)はいつの時点となりますか?
A対価の支払日で問題ないと考えます。
解説
会社法では株式併合の効力発生日がいつであるかの明確な定めはありません(会社法第182条)。端数相当株式の発行会社による買取は、裁判所の許可が必要であることから、裁判所の許可決定前に効力が発生することはないと考えます。
裁判所の許可決定がなされたとしても、株主側からは当該日付を認識することはできない点を考慮すると、端数相当株式の買取にかかる対価の支払日をもって、株主側で株式譲渡の効力発生日とするとで問題はないと考えます。この点、法人税法においても有価証券の譲渡損益を計上する事業年度について、株式併合の効力発生日についての明確な規定はありません(法人税法第61条の2、法人税法施行規則第27条の3)。
会社法第182条(効力の発生)
株主は、効力発生日に、その日の前日に有する株式(種類株式発行会社にあっては、第百八十条第二項第三号の種類の株式。以下この項において同じ。)の数に同条第二項第一号の割合を乗じて得た数の株式の株主となる。
2 株式の併合をした株式会社は、効力発生日に、第百八十条第二項第四号に掲げる事項についての定めに従い、当該事項に係る定款の変更をしたものとみなす。
法人税法第61条の2(有価証券の譲渡益又は譲渡損の益金又は損金算入)
内国法人が有価証券の譲渡をした場合には、その譲渡に係る譲渡利益額(第一号に掲げる金額が第二号に掲げる金額を超える場合におけるその超える部分の金額をいう。)又は譲渡損失額(同号に掲げる金額が第一号に掲げる金額を超える場合におけるその超える部分の金額をいう。)は、第六十二条から第六十二条の五まで(合併等による資産の譲渡)の規定の適用がある場合を除き、その譲渡に係る契約をした日(その譲渡が剰余金の配当その他の財務省令で定める事由によるものである場合には、当該剰余金の配当の効力が生ずる日その他の財務省令で定める日)の属する事業年度の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入する。
内国法人が有価証券の譲渡をした場合には、その譲渡に係る譲渡利益額(第一号に掲げる金額が第二号に掲げる金額を超える場合におけるその超える部分の金額をいう。)又は譲渡損失額(同号に掲げる金額が第一号に掲げる金額を超える場合におけるその超える部分の金額をいう。)は、第六十二条から第六十二条の五まで(合併等による資産の譲渡)の規定の適用がある場合を除き、その譲渡に係る契約をした日(その譲渡が剰余金の配当その他の財務省令で定める事由によるものである場合には、当該剰余金の配当の効力が生ずる日その他の財務省令で定める日)の属する事業年度の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入する。
一 その有価証券の譲渡の時における有償によるその有価証券の譲渡により通常得べき対価の額(第二十四条第一項(配当等の額とみなす金額)の規定により第二十三条第一項第一号又は第二号(受取配当等の益金不算入)に掲げる金額とみなされる金額がある場合には、そのみなされる金額に相当する金額を控除した金額)
二 その有価証券の譲渡に係る原価の額(その有価証券についてその内国法人が選定した一単位当たりの帳簿価額の算出の方法により算出した金額(算出の方法を選定しなかつた場合又は選定した方法により算出しなかつた場合には、算出の方法のうち政令で定める方法により算出した金額)にその譲渡をした有価証券の数を乗じて計算した金額をいう。)
法人税法施行規則第27条の3(有価証券の譲渡損益の発生する日)
法第六十一条の二第一項(有価証券の譲渡益又は譲渡損の益金又は損金算入)に規定する財務省令で定める事由は、次の各号に掲げる事由とし、同項に規定する財務省令で定める日は、当該各号に掲げる事由の区分に応じ当該各号に定める日とする。
法第六十一条の二第一項(有価証券の譲渡益又は譲渡損の益金又は損金算入)に規定する財務省令で定める事由は、次の各号に掲げる事由とし、同項に規定する財務省令で定める日は、当該各号に掲げる事由の区分に応じ当該各号に定める日とする。
一 剰余金の配当若しくは利益の配当又は剰余金の分配(分割型分割によるもの及び株式分配を除く。) これらの効力が生ずる日
二 解散による残余財産の一部の分配又は引渡し 当該分配又は引渡しの日
三 自己の株式(出資及び新株予約権を含む。)の取得の対価としての交付 その取得の日
四 出資の消却、出資の払戻し、社員その他内国法人の出資者の退社又は脱退による持分の払戻しその他株式又は出資を取得することなく消滅させることによる対価としての交付 これらの事由が生じた日
五 自己の組織変更 当該組織変更の日
六 自己を合併法人、分割承継法人又は株式交換等完全親法人とする合併、分割又は株式交換等 当該合併、分割又は株式交換等の日
七 自己を現物出資法人とする適格現物出資に該当しない現物出資(新株予約権又は社債と引換えにする給付を含む。) 当該現物出資の日
八 自己を現物分配法人とする適格株式分配に該当しない株式分配 当該株式分配の日
九 自己を令第百二十三条の十第一項(非適格合併等により移転を受ける資産等に係る調整勘定の損金算入等)に規定する譲受け法人又は同条第二項に規定する移転法人とする法第六十二条の八第一項(非適格合併等により移転を受ける資産等に係る調整勘定の損金算入等)に規定する非適格合併等に該当する事業の譲受け(第六号に掲げるものを除く。) 当該事業の譲受けの日
十 その有していた株式(出資及び新株予約権(投資信託及び投資法人に関する法律第二条第十七項(定義)に規定する新投資口予約権を含む。)を含む。以下第十四号までにおいて同じ。)を発行した法人を被合併法人とする合併 当該合併の日
十一 その有していた株式を発行した法人を分割法人とする分割型分割 当該分割型分割の日
十二 その有していた株式を発行した法人を現物分配法人とする株式分配 当該株式分配の日
十三 その有していた株式を発行した法人を株式交換等完全子法人とする株式交換等 当該株式交換等の日
十四 その有していた株式を発行した法人を株式移転完全子法人とする株式移転 当該株式移転の日
十五 その有していた法第六十一条の二第十四項各号に掲げる有価証券についての当該各号に定める事由 当該事由の生じた日
十六 その有していた株式又は出資を発行した法人の法第二十四条第一項第四号から第七号まで(配当等の額とみなす金額)に掲げる事由により金銭その他の資産の交付を受け、又は当該株式若しくは出資を有しないこととなつたこと(当該法人の残余財産の分配を受けないことが確定したことを含む。) 当該事由が生じた日又は残余財産の分配を受けないことが確定した日