分散した非上場株式の集約⑧-少数株主の相続時に相続時売渡請求条項が定款にない場合には、株式取得者からの強制買取は不可能と考えていないか?

Q株式が分散しており、少数株主(個人)からの株式集約を考えています。この度、買取対象株主に相続が発生しましたが、相続時売渡請求の条項が定款に定められていません。株式をの取得者から買い取ることはできないでしょうか?

A株式が特定遺贈されている場合には可能です。

解説
相続によって相続人が株式を取得した場合は、譲渡による取得ではなく包括承継による取得ですので、取締役会(又は株主総会)の承認決議は必要ありません(会社法134条1項4号)。ただし、特定遺贈の場合には一般承継にはあたりませんので、取締役会(又は株主総会)の譲渡承認決議を要することになり(会社法137条)、不承認とすることで会社が買い取ることは可能です。例えば、特定遺贈により株主の孫が取得した株式について、譲渡承認請求を不承認とすることで、会社による買い取りは可能となります。

 

会社法第134条第1項第4号
前条の規定は、株式取得者が取得した株式が譲渡制限株式である場合には、適用しない。ただし、次のいずれかに該当する場合は、この限りでない。
一 当該株式取得者が当該譲渡制限株式を取得することについて第百三十六条の承認を受けていること。
二 当該株式取得者が当該譲渡制限株式を取得したことについて第百三十七条第一項の承認を受けていること。
三 当該株式取得者が第百四十条第四項に規定する指定買取人であること。
四 当該株式取得者が相続その他の一般承継により譲渡制限株式を取得した者であること。

会社法第137条(株式取得者からの承認の請求)
第百三十七条 譲渡制限株式を取得した株式取得者は、株式会社に対し、当該譲渡制限株式を取得したことについて承認をするか否かの決定をすることを請求することができる。
2 前項の規定による請求は、利害関係人の利益を害するおそれがないものとして法務省令で定める場合を除き、その取得した株式の株主として株主名簿に記載され、若しくは記録された者又はその相続人その他の一般承継人と共同してしなければならない。