監査実務から税務実務への道④-監査法人から税理士法人への転職では職階と給与が下がる点を見逃していないか?

Q 監査法人から税理士法人への転職を考えるうえで注意すべき点を教えてくれますか?

A 転職直後は、職階と給与が下がります。

解説

監査法人の職階とあまり変わらないと思いますが、税理士法人の職階と役割は概ね以下のイメージです。

税理士法人の職階と役割(イメージ)

パートナー:売上(仕事)を取ってくる
ディレクター:専門性と経験による相談役
シニアマネジャー:大規模プロジェクトをマネジメントする
マネジャー:通常プロジェクトをマネジメントする
シニアスタッフ:スタッフを指導し、成果物を仕上げる
スタッフ:成果物を作成する

監査法人でマネジャーであっても、税理士法人では、原則シニアスタッフからスタートします。
まずは周りに認めてもらうことが大切です。

税理士業務が初めてであれば、転職して1階層下がるのは仕方がないと思います。
むしろ、初めての税務業界で、マネジャーから始めることはかなりハードルが高いです。

プロジェクトマネジメントを任された時に、スタッフに指示を出したり、成果物のチェックをしたり、クライアントに税金の話ができるのか?という問題に直面します。

特に部下となる者からすれば、税務実務をこれから学ぶ公認会計士が、突然上司ですと言われても、どれだけできるのか?と厳しい目線で見てくるのは当然です。
転職してきた人は、どんな属性の人でも値踏みされるものです。

その点、シニアスタッフもしくはスタッフから入れば、税務実務を学ぶ時間があり、1年間真摯な姿勢で学べば、周りの目も変わってきます。

税理士は、監査経験のある公認会計士の会計知識はもちろん、会社法や金融商品取引法などの法律知識をリスペクトしているものです。

特にシニアスタッフやスタッフは、まだ税理士資格取得に向けて勉強中の人が多いので、公認会計士資格を獲得している人に対するリスペクトが強くあります。
(逆に先輩スタッフには嫉妬心もありますが・・・)。

職階とともに、給与が下がる点を受け止められるか。

職階が下がるということは、給与が減ることを意味します。
多くの場合、監査法人よりも税理士法人の方が給与水準が低いのが現実です。

税理士法人のシニアスタッフだと、残業代含めて年収600万円〜800万円だと思います。

監査法人のマネジャー、シニアスタッフで年収1,000万円以上稼いでいる人にとっては、年収を落としてまで転職したいと思わないかもしれません。

職階が下がる点と給与の減額は、受け止めるしかない現実です。

「新しい業界でチャレンジする」ということは、0からスタートするということです。

そもそも新しいチャレンジをするにも関わらず、給与が維持できるものでしょうか?

そう考えると、監査法人所属の公認会計士が税理士法人に転職する場合、職階は一階層下がるだけで済むし、それなりの給与をもらえるというプラスの考え方もできます。

迷うことはあると思います。

専門家として、これからどのような道を進みたいのかを考えて、様々な選択肢を検討すればよいのではないでしょうか。

税務の世界に移ることも、様々な選択肢のうちの一つです。色んな可能性を模索しましょう。