分散した非上場株式の集約⑥-株式併合決議を定時株主総会で行う場合に、基準日後に株主でなくなった者、新たに株主となった者に与える影響を見落としていないか?
Q株式が分散しており、疎遠となっている少数株主と株式の買取交渉を行うことが難しいことから、株式併合によるスクイーズアウトを検討しています。定時株主総会において決議を行うことを想定しておりますが、端株相当株式の買取にかかる発行会社の対価の支払代金を抑制するために株主間で株式贈与を行うのですが、留意事項はありますか?
A原則的には、基準日後に株主でなくなる者に対して株式買取請求にかかる通知を行う必要があります。一方で、基準日後に新たに株主となった者に株式買取請求権を行使できる者と定めることもできます。
解説
スクイーズアウトの対象者が保有する株式をもとに、株式併合割合を決定することになりますが、当該対象者以外の株主(親子や親族)の間で、端数株式が最も生じないように実行前に調整しておくことが多いです。株式が分散し株主が多い会社においては、事務手続きも考慮して、株式併合決議のために臨時株主総会を開催するのではなく、定時株主総会に併せて決議を行いたい会社は多いと考えます。定時株主総会の議決は基準日株主(期末日時点の株主)で行うことになりますが、基準日後に株主でなくなった者がいる場合には、当該者にも株式買取請求にかかる通知を行うことになります(ただし、効力発生日前に株式を保有していなければ、株式買取請求権は喪失していると考えられます)。一方で基準日後に新たに株主となった者を、株式買取請求権を行使できる者と定めることができます(会社法第124条第4項)。
会社法第124条(基準日)
第百二十四条 株式会社は、一定の日(以下この章において「基準日」という。)を定めて、基準日において株主名簿に記載され、又は記録されている株主(以下この条において「基準日株主」という。)をその権利を行使することができる者と定めることができる。
2 基準日を定める場合には、株式会社は、基準日株主が行使することができる権利(基準日から三箇月以内に行使するものに限る。)の内容を定めなければならない。
3 株式会社は、基準日を定めたときは、当該基準日の二週間前までに、当該基準日及び前項の規定により定めた事項を公告しなければならない。ただし、定款に当該基準日及び当該事項について定めがあるときは、この限りでない。
4 基準日株主が行使することができる権利が株主総会又は種類株主総会における議決権である場合には、株式会社は、当該基準日後に株式を取得した者の全部又は一部を当該権利を行使することができる者と定めることができる。ただし、当該株式の基準日株主の権利を害することができない。
5 第一項から第三項までの規定は、第百四十九条第一項に規定する登録株式質権者について準用する。
会社法第296条(株主総会の招集)
第二百九十六条 定時株主総会は、毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならない。
2 株主総会は、必要がある場合には、いつでも、招集することができる。
3 株主総会は、次条第四項の規定により招集する場合を除き、取締役が招集する。