Q株式が分散しており、株主の中には所在が不明な株主がいます。株式の買取交渉ができないため、株式併合によるスクイーズアウトを実施したいのですが、留意事項はありますか?
A所在不明株主以外の株主に、1株に満たない端数の処理に伴う対価の情報が伝わる可能性があります。
解説
株式併合には株主総会特別決議が必要となりますが、その招集通知に「株式併合による1株に満たない端数の処理に伴う対価の支払代金の情報」を記載する必要はありません。ただし、法定の事前備置書類に「株式の併合に関する事前開示事項」があり、1株に満たない端数の処理により株主に交付することが見込まれる金銭の額及び当該額の相当性に関する事項の記載が必要となります。法定期間中は当該書類を本店に備えおく必要があり、株主は株式併合の実施会社の営業時間内であれば、いつでも閲覧請求をすることができます(会社法第182条の2)。スクイーズアウトの対象としない株主にも保有株式の交換価値が知られることで、今後の株式流通価格の基準値となる可能性が高いため、設定価格に留意しておく必要があります。
なお、1株に満たない端数が生じる株主に対しては金銭を支払うことになりますので、当該株主には確実に保有株式の換金価値が伝わることになります。
留意事項の補足
株式併合により保有株式の数に1株に満たない端数が生ずる場合には、反対株主は発行会社に対して、自己の保有株式のうち1株に満たない端数となるものの全部を公正な価格で買い取ることを請求することができます(会社法第182条の4)。反対株主による買取請求権の行使により、想定していた支払対価よりも高額な資金負担となる可能性がある点についても留意しておく必要があります。
会社法第182条の2(株式の併合に関する事項に関する書面等の備置き及び閲覧等)
株式の併合(単元株式数(種類株式発行会社にあっては、第百八十条第二項第三号の種類の株式の単元株式数。以下この項において同じ。)を定款で定めている場合にあっては、当該単元株式数に同条第二項第一号の割合を乗じて得た数に一に満たない端数が生ずるものに限る。以下この款において同じ。)をする株式会社は、次に掲げる日のいずれか早い日から効力発生日後六箇月を経過する日までの間、同項各号に掲げる事項その他法務省令で定める事項を記載し、又は記録した書面又は電磁的記録をその本店に備え置かなければならない。
一 第百八十条第二項の株主総会(株式の併合をするために種類株主総会の決議を要する場合にあっては、当該種類株主総会を含む。第百八十二条の四第二項において同じ。)の日の二週間前の日(第三百十九条第一項の場合にあっては、同項の提案があった日)
二 第百八十二条の四第三項の規定により読み替えて適用する第百八十一条第一項の規定による株主に対する通知の日又は第百八十一条第二項の公告の日のいずれか早い日
2 株式の併合をする株式会社の株主は、当該株式会社に対して、その営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。ただし、第二号又は第四号に掲げる請求をするには、当該株式会社の定めた費用を支払わなければならない。
一 前項の書面の閲覧の請求
二 前項の書面の謄本又は抄本の交付の請求
三 前項の電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧の請求
四 前項の電磁的記録に記録された事項を電磁的方法であって株式会社の定めたものにより提供することの請求又はその事項を記載した書面の交付の請求
会社法第182条の4(反対株主の株式買取請求)
株式会社が株式の併合をすることにより株式の数に一株に満たない端数が生ずる場合には、反対株主は、当該株式会社に対し、自己の有する株式のうち一株に満たない端数となるものの全部を公正な価格で買い取ることを請求することができる。
2 前項に規定する「反対株主」とは、次に掲げる株主をいう。
一 第百八十条第二項の株主総会に先立って当該株式の併合に反対する旨を当該株式会社に対し通知し、かつ、当該株主総会において当該株式の併合に反対した株主(当該株主総会において議決権を行使することができるものに限る。)
二 当該株主総会において議決権を行使することができない株主
3 株式会社が株式の併合をする場合における株主に対する通知についての第百八十一条第一項の規定の適用については、同項中「二週間」とあるのは、「二十日」とする。
4 第一項の規定による請求(以下この款において「株式買取請求」という。)は、効力発生日の二十日前の日から効力発生日の前日までの間に、その株式買取請求に係る株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)を明らかにしてしなければならない。
5 株券が発行されている株式について株式買取請求をしようとするときは、当該株式の株主は、株式会社に対し、当該株式に係る株券を提出しなければならない。ただし、当該株券について第二百二十三条の規定による請求をした者については、この限りでない。
6 株式買取請求をした株主は、株式会社の承諾を得た場合に限り、その株式買取請求を撤回することができる。
7 第百三十三条の規定は、株式買取請求に係る株式については、適用しない。