税理士の独立への道②-AIの進化により独立した税理士の収入源がどう変わるかを見逃していないか?
Q AIの進化により、独立した税理士の収入源がどう変わっていくかを教えてくれますか?
A 最も大きな変化は、中小企業との税務顧問契約で提供する業務が減少し、1件あたりの業務報酬が値下がりする点です。
解説
記帳は、AIが自動で行うことになるのは確実です。
決算書、税務申告書の作成もAIが作成してくれます。
AI導入時の設定と検証業務のニーズはありますが、運用開始後は、不定型の取引を記帳及び申告調整する「一部のチェック業務」だけの業務提供となると思います(※経営アドバイスなど実施していない前提)。
この意味で、将来的に税務顧問業務はなくならないと思いますが、月次往査はなくなり、多少の質問対応とチェック業務だけが残ります。
税務顧問報酬は、現状よりもさらに値下がりするでしょう。
税理士側の作業工数が大幅に減少するため、個人でも数多くのクライアントと顧問契約を結べるようになり、一定の税理士及び税理士法人に顧問先が集約されていくはずです。
個人事業主のうち、日々の取引が多数ある場合には、AIによる記帳の自動化で効率化させることができます。
税務申告書までAIが作成してくれれば、税理士の顧問業務は減少します。
ただし、個人においては本格的に事業を行っていない方も多く、記帳から税務申告書作成までを自動化したい方ばかりではありません。
年間所得が2,000万円を超える高額所得者や、不動産や株式を売却した方は、現状税理士に任せている税務申告書の作成業務を、将来においても税理士に依頼し続ける方が多いと思います。
この分野は、将来的にあまり影響がないものと考えます。
日本に相続税がある限り、相続対策業務はなくなりません。
高齢者の貯蓄が多く、さらに高齢者の増加が予測される日本で、高齢富裕層から税金を徴収する「相続税」という税目をなくすことは、あり得ないと思います。
相続税の制度変更が行われたとしても、なくなること、税負担が減少していくことはないでしょう。
高齢富裕層には、相続税を抑制したいニーズが強くあります。
相続税の課税対象者を増やす方向、増税の方向に改正された場合、高齢富裕層の相続税抑制ニーズは、ますます高まっていくことになります。
事業承継や資産承継に絡んだ相続対策は、将来的にもニーズの高い分野となるはずですので、この分野で独立する税理士は、今後さらに増えていくと思います。
富裕層の目線で考えると、保有する資産規模が多いほど、経験豊富な大手税理士法人に相続対策を任せることになると思います。
個人税理士に任せると、取扱う金額の規模の大きさから、失敗したときに責任が取れないと考えるでしょうし、個人税理士が亡くなった場合の対応にも困ります。
富裕層はブランド価値への信頼も高く、一生に一度の相続対策に大手税理士法人の安心感を求めるはずです。
独立した税理士においては、資産規模が多くない富裕層の取り合いになると思います。
個人税理士がリスクをとって対応するよりも、経験を組織で共有して、より大きなクライアントを数多く獲得する方が効率的です。
独立した税理士は、案件増加と案件規模の拡大に向けて、税理士法人化(組織化)していくと考えられます。